黙秘権という言葉はみなさんご存じだと思います。
日本の刑事手続において,犯罪を行ったと疑われ捜査を受けている被疑者,刑事裁判を受けている被告人には黙秘権が保障されています。
どうしてこのように被疑者,被告人には黙秘権が保障されているのでしょうか。
それは過酷な取調べがなされて人権が侵害されることがないようにするため,そして無実であるのに罪を認めて自白をしてしまうなどして,冤罪で処罰されることがないようにするためです。
仮に,黙秘権が認められないとしたらどうなるでしょうか。
取調べを受ける被疑者は,取調べに黙秘することはできないと言われてしまいます。
被疑者が無実を訴えたとしても,警察,検察は,犯罪を犯したと疑ってこれを認めさせようと取調べを続けます。
罪を認めさせようとするあまり,罪を認めるまで過酷な取調べが行われ続ける危険があります。
罪を認めなければこうした取調べは終わらず,無実であるのに罪を認めて自白をしてしまい,無実の罪で処罰される危険があります。
黙秘権は,こうした人権侵害や冤罪を防止するために保障されているとても重要な権利です。
もっとも,黙秘権が単に保障されているというだけでは,実際に人権侵害や冤罪の危険がなくなるものではありません。
黙秘権が保障されているにもかかわらず,過酷な取調べが行われ,無実の罪を認めて自白させられてしまう危険はあります。
取調べを受けるにあたって,適切に黙秘権が行使できるように弁護士が適切な助言を行うこと,そして過酷な取調べなど違法不当な取調べがなされないように,弁護士が適切な弁護活動を行い,実質的にも黙秘権が守られることが重要であるといえます。