控訴や上告をすべきか

 日本の刑事裁判

  逮捕され起訴されると刑事事件の第1審が地方裁判所で行われることになります(一部の軽微な事件は簡易裁判所の場合もあります)。
  第1審の裁判に不服があり控訴を申し立てると,事件は高等裁判所で第二審として審理されます。
  控訴審の判決にも不服があり,上告を申し立てると最高裁で第三審審理されることになります。
  このように,日本の刑事裁判は三審制を採用しています。
  しかし,地裁,高裁,最高裁の審理は違う裁判官が判断するものの,その審理の内容は全く異なります。
  裁判員制度の導入もあり,日本の刑事裁判における第1審重視の傾向は強まっており,控訴審での破棄率は10%前後で,上告審で破棄されるのは年数件というレベルです。

 
 控訴すべきか

  控訴すべきかどうかを考えるときには,
   ① 保釈されているか,されていなければ未決の日数
   ② 控訴審での見通し
 を検討する必要があります。
前提として,控訴審は,原判決の言い渡し日から概ね1ヶ月半~2ヶ月後くらいで控訴趣意書をの期限が定まります。
  控訴趣意書とは,第1審判決に対する不服な点を記載した書面です(通常は弁護人が作成します)。
  控訴趣意書を提出して,そこから1ヶ月程度で第1回公判,さらに2週間~1ヶ月で判決期日というのが一般的な流れです。
  そのため,控訴審の審理期間は概ね3ヶ月半~5ヶ月くらいで終了することがほとんどです。
  拘束されている場合の未決勾留日数は約2ヶ月を超える部分が算入されることが多く,裏を返せば2ヶ月は無駄に拘束されるということになります。
  第1審で言い渡された刑期が比較的短期である場合,控訴してダメだった場合は,社会復帰が2ヶ月遅れるということを意味しますので,その点を検討する必要があります。
  また,控訴して拘束されている場合,地裁の管轄地の拘置所から東京,大阪,名古屋などの高裁所在地の拘置所に移送になります。 

 
 控訴審の見通し

  控訴するかどうかという点において,最も重要な点は控訴して第1審が見直されるかどうかです。 
  確率的に言えば,10%なので可能性が高いとは言えません。
  特に犯罪事実に争いはなく量刑が問題となる事案においては,量刑というものにはある程度の幅があり,高裁の裁判官から見て仮に若干重いなと思えても,同種事案などと比較して適正な幅の中に量刑が収まっているような場合には破棄されないことがほとんどです。
  第1審判決が量刑の基礎とした事実自体に誤りがあるとか,第1審判決後に新たに示談が成立したなどの事情がないと,単に第1審判決の評価が不当で重すぎるといったことでは控訴審で見直される可能性は少ないといえます。
  事実を争う否認事件の場合を考えてみると,控訴審の基本的性格が,第1審判決の当否を審査するものとされており,証拠調べをやり直すものではありません。
  新しい証拠を取調べることには消極で,第1審の証拠から第1審の判決が正しいのかどうかが審査されることになります。
  従って,控訴審の見通しを考える上では,第1審の証拠から認定した第1審の判断それ自体に,論理的,あるいは常識的に考えて不当な点があるといえなければならないのです。

 上告すべきか

  最高裁に上告すべきかどうか,という点についてです。
  最高裁での上告審の審理期間は概ね控訴審と同じで,3ヶ月~5ヶ月であることが多いです。
  ただし,未決は約4ヶ月を超える部分が算入される運用で,概ね4ヶ月で終了することから,未決が算入されない(4ヶ月社会復帰が遅れる)ということがほとんどです。
  また,上告審では原則裁判自体が開かれず書面審理であることから,被告人は高裁所在地の拘置所から移送にはなりません。
  そして,何より圧倒的に破棄される(見直される)ことがないという実情です。
  刑期にもよりますが,上告するかどうかは十分慎重に検討しなくてはならないでしょう。

お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

0356147690電話番号リンク 問い合わせバナー