刑事裁判に被告人質問というものがあります。
起訴されて刑事裁判が開かれることになると,まずは検察官の立証活動から行われます。
検察官は有罪を証明するのに必要だと考える,証拠-書証や証人,証拠物-などを裁判所に取り調べるよう求めます。量刑事件(争いのない)事件では,証人尋問がないことも多いですが,否認事件(検察官の主張を争う)では,検察官が請求する証人尋問が行われます。
検察官の立証活動が終われば、その後は弁護側の立証活動です。
量刑事件では,示談書などの書証,家族の情状証人が行われ,最後に被告人質問です。
否認事件では,弁護側の主張を裏付ける書証や弁護側証人ののち,被告人質問です。
このように,どんな事件でも最後に被告人質問の機会があります。
被告人質問とは,証人尋問の被告人版で,まず弁護人から質問し被告人が答える,弁護人の質問後,検察官が質問し被告人が答える,最後に裁判官からも質問があります。
被告人は裁判の当事者という立場であると同時に,事件を体験した(していない)本人でもあるので,被告人質問で自らの記憶を供述することが求められます。
刑事裁判の冒頭でこのように裁判長から説明を受けることがあります。
「あなたには言いたくないことは言わなくていいという権利(黙秘権)があります。ただ,話をする場合には有利にも不利にも証拠として扱われますので注意してください」
被告人質問で話した内容が時に有罪判決の根拠となることすらあるのです。
従って,どのような話をするかについては十分かつ慎重な検討が必要です。
場合によっては,黙秘するということで被告人質問を行わないという選択肢もあります。
被告人質問でどのような質問をするか、どのように答えるかについて十分な打ち合わせを自分の弁護人としましょう。
量刑を決める裁判で被告人質問で実刑と執行猶予が分かれたり、事実を争う裁判では被告人質問によって無罪を勝ち取ることができることもあるのです。