裁判員裁判によって行われた裁判の判決が,控訴審で覆されることがあります。こういう判決がニュースになると,国民である裁判員の意見を裁判官が無視したなどと批判されることがあります。
しかし,当然ではありますが,裁判員も間違えます。裁判員だから間違えるとはもちろん言いませんが,裁判官と同じで,間違えることがあります。控訴審は,こうした裁判の間違いを訂正するための機会です。裁判官裁判だろうと裁判員裁判だろうと,無実の人が罰せられてはいけないし,もしその疑いがあるのであれば躊躇なく判決を取り消すべきです。高等裁判所の裁判官が,原審が裁判員裁判かどうかでその判決を取り消すかどうかの結論を変えるのなら,それは単純な形式論であって,あまり賛同できません。
それでは裁判員裁判の意味がないではないかと思われるかもしれませんが,そうではありません。日本の控訴審の仕組みは,基本的に,一審の判断を尊重する仕組みになっています。たとえば高等裁判所の裁判官が一審の刑が少し重いと思っても,それが不当に重い程度に至っていなければ,わざわざ一審の判決を破棄することはありません。また,高等裁判所ではあまり新しい証拠を調べることはありません。一審の判決と証拠を見て,常識や論理性に照らして不合理といえるような内容でなければ,破棄することはありません。
こうして,控訴審は一審の判断を尊重しています。それは裁判員裁判でも裁判官裁判でも同じで,裁判員裁判を特別扱いすることを奨励する法律や判例は,今のところありません。