裁判員裁判の証拠調べの最初に,検察官と弁護人から冒頭陳述をする機会があります。冒頭陳述は,法律上は,その後の証拠調べで証明しようとする事実を明らかにする手続であるとされています。弁護側は,この冒頭陳述の機会に,この事件の真実と考える
この冒頭陳述は,事件についてほとんど知識を持っていない裁判員や裁判官を前に行うものです。事案によっては詳しく語らなければいけない事案ももちろんたくさんありますが,一般的には,情報量をしぼったシンプルなものが望まれます。裁判の準備のためにたくさんの証拠を検討している弁護人は,細かく事実を主張してしまい,複雑でわかりにくい冒頭陳述になってしまいがちなので注意が必要です。
冒頭陳述は,あくまで当事者の主張であって証拠ではありません。ですので,冒頭陳述それ自体に説得力があるからと言って主張が認められることはありません。しかし,その後の証拠調べで出てくる証拠が冒頭陳述と一致していれば,その冒頭陳述の主張が,証拠から見ても真実であろうという心証を抱かせることができます。これが冒頭陳述の役割です。ですから,冒頭陳述の内容は,常識的でわかりやすいだけでなく,証拠ときちんと整合していることが求められます。