きのう,裁判員裁判で行われたある事件の判決が,東京高裁で覆りました。事件は,元交際相手を殺害したとして殺人等に問われた事件です。ストーカー殺人事件として,ニュースなどでもセンセーショナルに報道されました。一審の東京地方裁判所では懲役22年の判決が下され,被告側が控訴していました。
被告人の控訴を受け入れ,東京高裁はもう一度,東京地方裁判所での審理のやり直しを命じました。
この事件は殺人事件ですが,被告人が事件後に被害者のわいせつ画像と思われる画像をインターネット上で拡散したこと(いわゆる,「リベンジポルノ」)が大きな問題になりました。そして,そのことが裁判でも大きく取り上げられ,被告人の刑を重くする大きな理由となっていました。
しかし,東京高裁は,それを過大評価する審理を行ったことは誤りだとしたとされます。もちろん,リベンジポルノは非難されるべきですが,それ自体は殺人行為の内容ではありません。殺人罪としての刑を重くする理由にするのには限界があります。
この判決の興味深いところは,報道によれば,一審で裁判の準備(「公判前整理手続」といいます)をするにあたり,裁判でもリベンジポルノを重視するような争点整理がなされていることを誤りだとしている点です。判決は,リベンジポルノの主張立証の当否や範囲が議論された形跡はない,として,争点整理のありかたを誤りだと判断したようです。
この裁判の準備には,弁護人も関わります。弁護人としては,量刑に関係の薄い事実は何か的確に判断し,それが裁判で重要な要素とされることに的確に異議を述べなければなりません。裁判の準備の段階での弁護人の役割が重要であることを,この判決はいっているように思います。
このように,裁判員裁判においては,裁判の準備の段階から,適切な量刑の理解に沿った弁護活動が必要不可欠なのです。そのためには,刑事事件・裁判員裁判に特化した弁護人の活動が,強く勧められます。