裁判員裁判などでは公判前整理手続が行われます。公判前整理手続の重要な機能のひとつとして,弁護人に,検察官に証拠を開示するよう請求する権利が認められていることです。
公判での戦略を立てて,的確な尋問を行うためには,幅広い証拠を検討することが必要です。また,そもそも捜査段階から検察官と弁護人には圧倒的な情報格差があります。当事者として検察官と互角に渡り合うためには,なるべくこの情報格差を少なくし,一見重要でなさそうな証拠であっても注意深く検討し,検察官が気づかないような事件の側面に光をあてなければなりません。
しかし残念なことに,検察官は未だに証拠開示に消極的です。法律上の要件に該当する場合であっても,主張に関連し,必要な証拠について開示を拒否することはよくあります。中には,証拠開示請求を「証拠漁り」などと呼んだり,証拠を開示することと引き換えに,弁護人に手の内を明かすように暗に求めてくる検察官もいます。
検察官が開示すべき,弁護人には裁判所に裁定を求めるという手段があります(刑事訴訟法316条の26第1項)。裁判所は検察官の意見をきき,証拠を開示すべきと考えるときには,検察官に証拠を開示するよう命じます。裁判体によって,裁定請求に対するスタンスは大きく異なるのが実情ですが,弁護人が諦めずに証拠の開示を求めていくことは重要です。