公判前整理手続において、弁護人は、一定の証拠の開示を検察官に請求する権利があります。公判前整理手続においては、できるだけたくさんの証拠を検察官に開示させることが重要で、証拠開示請求を徹底的に行うことは必要不可欠な弁護活動です。
ところが、この手続の中で、検察官との争いになる場合があります。証拠開示には法律で決まった要件があり、検察官が、この要件に当てはまらないので証拠は開示しないと主張してくるわけです。
そういうときのために、検察官が開示すべき証拠を開示していないと認められる場合には、裁判所に対して証拠開示を命令することを求めることができます。これを、一般に「裁定請求」といっています。
裁判所は、裁定請求に理由がある、つまり検察官が証拠を開示していないと認めれば、検察官に対して証拠を開示することを命じます。しかし、検察官に証拠開示の義務がないと判断すれば、裁定請求を棄却することとなります。
もし、裁定請求が棄却された場合、弁護人には不服申立の手段があります。「即時抗告」という手段です。決定が送達されてから3日以内に、高等裁判所へ不服申し立てを行い、裁定請求を棄却した判断が正しかったのかどうか、審理を求めることができます。
重大で複雑困難な否認事件では、こうした証拠開示をめぐっても検察官と激しい争いになる場合があります。徹底した証拠開示と不服申立手段に精通していることは、重大否認事件の弁護活動に不可欠です。