勾留を回避する活動では,検察官や裁判所に,弁護人が意見書や様々な添付資料を提出し,説得を試みます。証拠隠滅の危険性や逃亡の危険性が乏しいことを,具体的な事実や資料をもとに明らかにし,勾留の要件や必要性がないことを主張します。他方,勾留を争う活動は,常に時間との闘いです。弁護人は,その限られた時間の中で豊富な資料を集めなければなりません。
そのような資料の中で,特に重要なのが,身元引受人から,被疑者に関する事情を聴取した書面です。身元引受人とは,被疑者が証拠隠滅をしたり,事件関係者に接触したり,逃亡しないように監督する役割を負う人物です。ほとんどのケースでは,被疑者の配偶者や親族がなりますが,親しい友人や雇用主に御協力いただき,身元引受人になっていただくこともあります。
検察官や裁判所には,この身元引受人から聴取した事情を記載した書面を提出します。この際,単に身元引受をする旨記載した書面を出すだけではなく,被疑者の生活ぶりや,事件とのかかわり,勤務態度などを詳細に聴取し,細かく書面に記載するべきです。それにより,被疑者が証拠隠滅をしたり,捜査機関から逃れて行方をくらますような人物ではないこと―確固たる生活基盤をもった社会人であること―を理解してもらうことができます。身元引受人から聴取した内容をまとめた書面は,弁護人が収集できる資料の中でも最も情報量が多く,価値の高いものです。刑事弁護人には,身元引受人から,短時間で豊富な事情を聴きとる技術や,聴取した内容を分かりやすく書面にまとめる技術が要求されます。