「受刑者が刑務所から逃げた」「勾留されている人が警察署から逃げた」というニュースをたまに耳にすることがあると思います。
自ら逃走する罪としては「単純逃走罪」と「加重逃走罪」があります。
単純逃走罪とは、文字通り、逃走する行為が処罰の対象です(刑法97条)。
加重逃走罪は、①拘禁場または拘禁のための器具を損壊し、逃走、②暴行・脅迫を行い逃走、③二人以上の通謀を行い逃走のいずれかの行為がをすることが成立要件となっています(刑法98条)。
刑事事件で身体拘束をされた人が逃げた場合、すべての人がこれらの罪の対象になるわけではありません。
また、単純逃走罪と加重逃走罪とでは、主体になる者は、法律上、一致していません。
たとえば、以下の者は、加重逃走罪には成立し得ますが、単純逃走罪は成立しません。
〇勾留状、勾引状又は収容状の執行を受けたが刑事施設等に収容される前の被疑者、被告人又は刑確定者
〇逮捕状により逮捕され、又は緊急逮捕されて(逮捕状の発付後)、刑事施設等に留置される前の被疑者、留置中の被疑者
〇勾引状により執行を受けた証人
〇更生保護法の引致状の執行を付けたが、刑事施設等に留置される前の者
なお、現在、この逃走の罪については、法制審議会(逃亡防止)部会で、議論が行われています。
今後、これらの罪の主体が変わる可能性があります。