覚せい剤を持っていたのに無罪判決が出る,ということがあります。
覚せい剤を持っていたとしてもその押収手続に重大な違法がある場合には,刑事裁判の証拠とすることができないというルールがあるからです。
なぜこのようなルールがあるかというと,捜査の行きすぎを抑止するためです。捜査というのは市民のプライバシーや人権を脅かす可能性を持っています。
たとえば,覚せい剤を持っているかどうかを自白させるために,暴力を振るうということは許されません。
警察や検察の捜査も,憲法や刑事訴訟法に規定に基づき,適正に行われなければなりません。
特に強制処分といって,相手の承諾がなくても行うことができる捜査手法(いわゆるガサ入れ,逮捕など)は,適正に行うために裁判所による令状が必要とされています。裁判所がそのような強制処分をしてよいかどうかチェックする役割を持っています。
しかし警察や検察は,時として犯人を逮捕したい,起訴したいとの思いから,行きすぎた捜査をしてしまうことがあります。
よくあるのは任意同行や所持品検査です。任意同行や所持品検査は原則として本人の同意のもとに行われなければなりません。しかし,警察官が取り囲んで半ば強制的に連行したり,帰りたいという本人の申し出を拒否したりします。あるいは令状もないのに勝手にカバンの中や車の中を捜索したりするのです。
このような違法な捜査の結果得られた証拠を,刑事裁判の証拠とすることを認めてしまっては,警察や検察は今後もどんどん違法な捜査をしていってしまうことになります。
そこで,重大な違法がある場合には証拠とすることができない,というルールを設けることによって,将来における違法な捜査を抑止しているのです。
当事務所では,違法収集証拠の主張をして不起訴になった事例や無罪になった事例の取り扱いがあります。
捜査が違法なのではないか,というご相談もお気軽にお問い合わせ下さい。