執行猶予中の再犯は実刑が多い
覚せい剤や大麻などの違法薬物は依存性が高く,違法薬物の自己使用や所持は再犯率が高い犯罪であるといえます。
違法薬物の自己使用や所持で執行猶予判決を受け,その猶予期間中に違法薬物の自己使用や所持を繰り返してしまい有罪となる場合,どんな刑が言い渡されるでしょうか。
情状に特に斟酌すべきものがあると認められれば,再度の執行猶予が付せられて実刑を免れることになりますが,とてもハードルが高いと言えます。
一部執行猶予の制度
刑法が改正され平成28年6月から刑の一部執行猶予の制度が導入されることになりました。
執行猶予中の再犯で実刑が言い渡される場合,通常の罪の場合は刑の一部執行猶予は認められません。
しかし,覚せい剤や大麻などの違法薬物の自己使用や所持で有罪となる場合は,実刑の刑期の一部の執行が猶予される可能性があります(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律3条)。
一部執行猶予は3年以下の実刑判決を言い渡す場合に,その一部の刑期について,1年以上5年以下の期間猶予することになります。
もっとも,一部執行猶予も実刑であり,前刑の執行猶予は取り消され,前刑の刑期と一部執行猶予の刑期を併せて服役することになります。
また,猶予期間中は,保護観察に付されることになります。保護観察においては,薬物乱用防止プログラムが実施されています。
刑の一部執行猶予が付せられるかどうかは,刑務所内での処遇に引き続いて,社会内で薬物依存の改善を行う処遇を行うことが,再犯防止に必要であり,かつ相当であるといえるかにより判断されます。
このため,刑の一部執行猶予が付せられるかについては,ご本人の反省などの他,更生する意欲や薬物乱用防止プログラムを受講する意思,更生を支援する家族などの存在や更生環境などが重要であると言えます。