「執行猶予判決がふさわしい刑です。」
「検察官が求める刑は重すぎる刑です。」
裁判員裁判において,そのようにふさわしい刑の重さについて説得的に説明するためには,まず裁判所が刑の重さをどのように判断しているか理解する必要があります。
例えば,裁判を受けている被告人が,事件の当時,仕事をせずにお金の無駄遣いをしていたとしても,そのこと自体は犯罪として処罰されるものではありません。
裁判所は,行った犯罪行為について責任を取らせるのが刑罰を科す目的の基本であると考えています。
また,日本の刑法では,罪に対して幅広い刑が定められています。
そして,同じような犯罪行為を行ったのに対して,判断をする裁判官,裁判員が異なれば,刑が重くなったり軽くなったりするというのであれば,公平とはいえません。
このため,まず,今回の犯罪行為がその罪においてどういった類型の犯罪かとらえ,これまでの裁判例からその類型の犯罪についてどういった量刑傾向があるか把握します。
例えば,今回の犯罪がタクシー強盗を行ったものであれば,これまでの裁判例でタクシー強盗においてどういった量刑傾向があるかを把握することです。
次に,犯罪行為の客観的な重さと,そうした犯罪行為を行った意思決定に対する非難の程度から,今回の犯罪行為がその量刑傾向の中で重い部類か,軽い部類かというように幅を持って位置付けを考えます。
その上で,その他の事情を考慮して,その幅の範囲でどういった刑が言い渡されるべきかを決めるという判断をしています。
そして,刑を軽くする事情について,単にそうした事情があるということを指摘するのではなく,なぜその事情が刑を軽くする事情であるかを説明する必要があります。
例えば,被害弁償がなされているという事情があった場合,単にそのことを指摘するだけではなく,被害弁償により事後的に被害回復がなされ,責任を果たそうとしているといったことを説明する必要があります。
裁判員裁判において,執行猶予判決や検察官が求めるよりも軽い刑の判決を得るには,このように裁判所における判断をきちんと理解し,説得的な説明をする弁護活動が必要であると言えます。