刑事裁判を傍聴していると,要旨の告知という言葉が使われることがあります。
これは,刑事裁判で証拠として採用された証拠書類の取調べ方法についての専門用語です。
刑事裁判では,検察官や弁護人がそれぞれの主張を立証するため,証拠を裁判所に取調べてもらうために,証拠の取調べ請求が行われます。
この中には証人の場合もありますが,書類の場合もあります。
書類が証拠として採用された時,刑事訴訟法第305条の規定により,原則として全文朗読しなければなりません。
刑事訴訟法第305条第1項
検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調をするについては、裁判長は、その取調を請求した者にこれを朗読させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを朗読させることができる。
ところが書類が膨大になると,それを朗読しているだけで長時間かかってしまうために,審理を効率化するために,その要点を口頭で述べること-要旨の告知-で済ます場合があるのです。
刑事訴訟規則第203条の2第1項
裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、請求により証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、その取調を請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にその要旨を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
実際の刑事裁判では,ほとんどが要旨の告知で行われています。
実際には,裁判官が裁判終了後に裁判官室で証拠を読むということになります。
ところが,市民が裁判員として参加する裁判員裁判では,裁判員が法廷以外で証拠書類を一から確認することは困難です。
法廷で行われたものだけで判断をするという本来の原則のとおり刑事裁判が行われるようになりました。
なので,裁判員裁判では,全文朗読が基本となっています。