刑事裁判において,法廷で証人に証言させる尋問は,弁護士が質問し証人が答えるという質問と答えの言葉のやりとりで行われます。
実際にどういった動きがあったかなどは,証人の言葉による説明だけでなく,実際の動きなどを証人にやって見せてもらうことで,判断をする裁判員,裁判官に分かりやすくなると言えます。
しかし,刑事裁判の証人尋問の場において,証人に動きを再現してやって見せてもらうことは,尋問についての刑事裁判のルールに従って行われる必要があります。
証人尋問において,証人自身に動きを再現してやって見せてもらうことが許されるのは,刑事訴訟法規則199条の12で規定されている供述を明確化する場合です。
実際に動作をやって見せてもらう前に,証人に証言してもらい言葉で説明してもらう必要があります。
刑事訴訟法規則で規定されているのは,証人が証言した供述を明確化するためであって,まだ証言していないのに動作をやってもらうことはルール違反です。
また,証言した以上にその後の動作や他の動作までやって見せてもらうこともルール違反です。
刑事裁判の証人尋問において,分かりやすい尋問を行うためには,証人に実際に動作をやってもらうこと一つの有効な方法です。
しかし,そのためには,刑事裁判のルールを正しく理解した上で,ルールに則って適切に尋問することが弁護士に求められるといえます。