逮捕容疑と起訴罪名

高齢者が入院する病院で熱中症の疑いで死者が多数出たとして報道されている事件で,警察が殺人容疑で捜索に入った,とされています。

病院に対して殺人容疑で捜査することは珍しいケースです。
ただ,これはまだ捜索令状を殺人の容疑で請求して発付されたというものにすぎません。
現行犯逮捕でない事件の場合,関係者への聴き取りや捜索押収などの捜査を経て,犯罪が成立するかどうかを検討し,その上で逮捕し,最終的には検察官が起訴するか否かを判断します。

従って,捜索の段階の容疑が,逮捕段階で変更されることや,逮捕した罪名と起訴する罪名が異なるということは珍しいことではありません。

本件では,エアコンをつけなかったということが問題のようですが,仮にそのような事実関係であった場合,殺人罪に問うには,死亡の予見可能性や,殺意等が問題となります。
通常はこのようなケースでは業務上過失致死が問題となるので,逮捕段階や起訴段階で罪名は慎重に検討されるでしょう。

マスコミを賑わすような事件では,捜査の初期の段階での警察の見込みが大々的に報道され,世間にイメージが付いてしまうという問題があります。

警察や検察の捜査(逮捕や起訴も含みます)は,あくまで見込み(警察や検察の考え)であり,起訴され有罪が確定するまでは無罪推定の原則が働いているということに十分留意する必要があります。

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