事例報告:職務質問の違法性を指摘し,不起訴を獲得した事例

以前担当した事例について報告します。

依頼者は,ある雑居ビルに入ろうとしたところを,路上にいた警察官に声を掛けられ,停止するよう言われました。依頼者の方がそれに応じず立ち去ろうとすると,警察官は,雑居ビルの中の入り口部分に入り,依頼者の腕をつかみました。警察官は,所持品検査をさせるよう何度も依頼者に要求しましたが,依頼者は拒否しました。すると,警察官は応援を呼び,警察官の数はどんどん増えました。最終的には,狭い雑居ビルの入り口部分に5人以上の警察官がひしめき合い,依頼者を取り囲むような状態になりました。警察官達は,依頼者を取り囲む間も,何度も依頼者の腕などをつかみました。最終的に依頼者はあきらめて所持品を出しました。依頼者は警察署に移動し,尿検査が行われたところ,陽性反応が出たため,覚せい剤を使用した容疑で逮捕されました。

 

このような話を依頼者から聞き,警察官達の行動は,本来は任意に行われなければならない職務質問の範囲を超えて,依頼者の身体の自由や移動の自由を侵害する,違法なものであると考えました。そして,違法な捜査をきっかけとして尿検査が行われたことから,この尿検査の結果を裁判で証拠とすることは許されず,したがって依頼者は不起訴釈放とされなければならないはずだと考えました。このような弁護方針の下,依頼者の話を,どのような証拠で客観的に裏付けるかが悩みどころとなりました。

依頼者に更に話を詳しく聞いたところ,警察官に囲まれている自分の姿を通行人が撮影し,アップロードしており,その写真を自分も掲示板でみたことがあるとのことでした。早速その掲示板を確認し,事件当日に,現場のビルの写真や,現場ビルの入り口に警察官がひしめき合っている写真がアップロードされていることを確認しました。これを直ちに印刷し,報告書にしました。また,現場に行ってみると,警察官に囲まれたビルの入り口部分は,壁に囲まれた非常に狭い空間でしたので,それがわかるような写真を撮影して報告書を作成しました。

一方,依頼者の方には,取調べに応じず,黙秘するよう指示しました。弁護人が依頼者の言い分に基づいた意見書を作成し,上記の報告書などを添付し,勾留期間中に検察官に提出しました。

依頼者の方は満期で処分保留のまま釈放され,その後不起訴処分になりました。

このように,起訴される前でも,弁護人が積極的に証拠を収集することが重要です。

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