取調の可視化
被疑者に対する警察,検察による取調べの録音録画(いわゆる取調べ可視化)を原則として義務付ける刑事訴訟法の改正が,本年6月1日から施行されます。
しかし,今回の改正で全ての取調べが対象となったものではありません。
裁判員裁判対象となる一定以上の重大事件と検察官の独自捜査事件に限られています。
また,逮捕勾留という身体拘束中の被疑者に対する取調べに限られています。
ですから,対象外の事件については,録音録画がなされずに取調べが行われる可能性があります。
この点,先に軽微な裁判員裁判対象ではない事件について逮捕されて取調べを受け,後から裁判員裁判対象事件について再逮捕を受けるということは,普通にあることです。
また,対象外となる逮捕勾留という身体拘束の前に,捜査を受けて取調べを受けるということも一般にあり得ることです。
取調部の録画録音と刑事裁判
さらに,今回の改正法施行前から,警察,検察において,取調べの録音録画をする運用がなされてきました。
しかし,取調べの録音録画がなされても,裁判において,取調べにおける供述が任意でなされたものか,信用できるものかの争いがなくなったわけではありません。
今回の刑訴法改正の施工後もかわらず,事実と異なる供述をして間違って処罰されることのないよう被疑者に対して適切に助言をし,また違法,不当な取調べがなされないよう弁護活動をしなければならないものと言えます。