警察,検察による捜査の過程では,多数の物が押収されます。例えば自宅を捜索されて事件に関係のありそうな物が差し押さえられたり,あるいは携帯電話などの所持品の任意提出を促され,提出した物が領置される,というような場合が典型的です。
押収される物の中には,早急に返却してもらわなければ困る物もあります。例えばキャッシュカードや預金通帳,携帯電話などは,手元になければ日常生活に困難を来します。また,会社を経営している方や個人事業主の方にとっては,業務に関する書類,経理関係書類などが返ってこないと,自分だけでなく社員や取引先にも大変な迷惑がかかることもあります。
押収品の還付
刑事訴訟法は,捜査機関に対しても「押収物で留置の必要がないもの」については,事件の終結をまたずに「これを還付しなければならない」と規定しています(123条1項,222条1項)。「還付」とは押収した物を持ち主に返すことです。捜査機関に対し,既に捜査が遂げられ,物を留置しておく必要がなくなったと主張し,還付を請求することで,事件が終結する前に早期に物を返還するよう求めることができます。しかし,事案や物の内容にもよりますが,検察官はいったん押収した物についてはなかなか還付に応じず,事件が終わるまで返還しないことが多いと言えます。
準抗告
このような場合,裁判所に対して,検察官が還付請求に応じないこと,すなわち還付請求却下処分の取り消しをもとめて準抗告を申し立てるという手段があります。裁判所に,既に物に関する捜査は終わっており,捜査機関の手元に置いておく必要性がないことを主張して,捜査機関に物の返還を命じるよう求めることが可能です。なお,判例上,検察官が還付請求を無視する,すなわち還付するともしないとも回答しない場合も,合理的な期間が経過した場合には,黙示的な還付請求却下処分があったものとして,準抗告を申し立てることが可能とされています。
捜査機関による理不尽な捜査により,生活に大きな支障が出ている場合には,裁判所に積極的に判断を求めるべきです。