刑事事件における有罪の判決には,証拠の標目を記載しなければならないとされています。
刑事訴訟法
刑事訴訟法335条
1 有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。
2 法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならない。
証拠の標目とは,有罪判決として認定した罪となるべき事実を判断した根拠となる証拠という意味です。証人○○の証言,捜査報告書(甲○号証),などと記載されます。
証拠の標目
有罪判決に対して控訴した場合,第1審判決が記載した証拠の標目から罪となるべき事実を認定したのが正しいか,という観点で検討する必要があります。
検察官は,第1審の際有罪を立証するため多数の証拠を裁判所に請求します。しかし,裁判官は,検察官の提出する証拠全てを信用するわけではありませんし,どっちともいる証拠と考える場合もあります。
そのため,第1審で証拠として取り調べられたが,判決の証拠の標目には掲載されない,ということは珍しくありません。
そこで,証拠の標目に記載されていないのに,控訴審においてそのような証拠は信用できない,それを前提とした判決は誤りだと主張してみても適切な控訴趣意にならないことになります。
これは第1審で不当だと思う証拠を調べられた,とか弁護人が第1審から引き続き控訴審も担当するような場合に陥りがちなことです。
控訴審で控訴趣意書を作成する場合には,判決理由として証拠の標目も検討することを忘れてはなりません。