刑事裁判において,統合失調症などの精神の障がいによって事件を起こしたとき,心神喪失や心神耗弱が問題になることがあります。
責任能力で問題となる心神喪失・心神耗弱
人が有罪として処罰されるのは,悪いことだと分かって,自分の行動をコントロールできるのにあえて犯罪を犯すからです。
まだ判断能力や行動制御能力が未熟な14歳未満の行為は処罰されないのと同様に,精神の障がいによって,責任能力を欠く場合が,心神喪失,著しく低下している場合が心神耗弱です。
刑法第39条
1 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
刑法が定めるように心神喪失の場合は無罪(医療観察法による治療を受けなければならない場合はあります),心神耗弱は刑が必要的に減軽されます。
心神喪失・心神耗弱とされるためには
ここで,病気の人が事件を起こすと何でも心神喪失や心神耗弱になるわけではありません。
病気の影響で完全に判断能力を欠いていた場合が喪失,「著しく欠いていた」場合が心神耗弱で,著しくない場合には通常通り刑が科されます(量刑上考慮されます)。
従って,心神耗弱状態とは判断能力が「著しく低下」していた場合であり,ほとんど責めることができないような状態なのです。
喪失ではないから,自分の考えで犯罪を起こした面があるといって,重い刑で処罰するのは間違いです。
判断能力が「著しく低下」していたわけですから,自分の考えて起こした側面はほんのわずかなのです。