捜査機関は,被疑者以外の第三者について取調べを行うことができますが(刑訴法223条),逮捕している被疑者と異なり,強制力を持って取調べることはできません。
任意の供述が得られない,あるいは一旦取調べたものの,公判で証言を変更する可能性がある場合などに,第1回公判の前に裁判所で証人尋問を行うことができます。
刑事訴訟法226,227条はその手続を定めた規定です。
226条は取調べ自体が出来なかった場合の規定ですが,検察官にとってどのような供述をするか不明であるため,あまり用いられません。
実務上問題になるのは,227条の方であり,捜査段階で検察官に有利な供述をした共犯者などが公判での証人尋問でも同旨の証言をしない可能性がある場合などに,行われます(また,証人予定者が外国籍で本国に帰国してしまう可能性がある場合もよく利用されます)。
この227条の証人尋問は,弁護人の立会は保障されていません。裁判官の裁量で立ち会わせることもありますが,証拠の開示などが不十分な中効果的な反対尋問をすることは難しい面があります。
このように実質的な反対尋問を経ない尋問結果が,公判で証拠とされることには大きな問題があるのです。
第226条
犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第223条第1項の規定による取調に対して、出頭又は供述を拒んだ場合には、第1回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。
第227条
第223条第1項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第1回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。
前項の請求をするには、検察官は、証人尋問を必要とする理由及びそれが犯罪の証明に欠くことができないものであることを疎明しなければならない。