1 法的手続の種類
刑事事件の被害者が取り得る法的手続きは、大きく
① 民事手続
② 刑事手続
に分けられます。
刑事手続と民事手続は、別の手続
「刑事手続」と「民事手続」は、別の手続です。
刑事手続が進んだからといって、加害者からの損害賠償が自動的になされるというものではありません。もっとも、加害者としては、刑事手続において自身の処分や罪が軽くなる可能性が高いことで、民事の損害賠償を行おうとするインセンティブになります。
2 民事手続
損害賠償請求
民事手続は、加害者に対して、損害賠償請求をして被害に対する金銭賠償の支払いをさせる手続です。
加害者と支払額や支払い方法を交渉し和解して支払わせることや、民事訴訟を提起し、判決を求める方法が考えられます。
民事訴訟
加害者が支払いに応じない場合、取り得る手段としては、裁判所に民事訴訟を起こすことが考えられます。
民事訴訟では、請求する側(原告側)が請求の根拠となる主張と証拠を準備しなければなりません。(もっとも、刑事手続で加害者が捜査を受け、裁判を受けた場合は、刑事手続で作成された証拠を入手する方法もあります。)
判決後の回収可能性
民事訴訟で勝訴したからといって、加害者から勝訴した額の金額が支払われるとは限りません。支払われなければ、被害者の方で加害者の資産を突き止めて強制執行する必要があります。資産がないのであれば、勝訴しても現実に被害弁償がなされない可能性があります。
時効
被害及び加害者を知った時から3年の時効があるため、注意が必要です。
3 刑事手続
刑事手続
刑事手続は、加害者に対して刑事罰を受けさせる手続きです。
被害届
被害者の方としては、捜査機関に対して犯罪被害があったことを申告し、被害届を提出することが考えられます。
告訴
被害届の提出だけでは警察が捜査に着手しない、あるいは裁判するのに告訴が必要とされている罪(親告罪と言います)の場合、被害者の方としては、警察、検察に対して、加害者に対する処罰を求めて告訴状を提出し、告訴することが考えられます。
警察、検察は、告訴を受理するかは慎重になる場合もありえます。
告訴を受理してもらうためには、告訴状の作成において、加害者の犯罪が成立することの主張や、その犯罪の成立に証拠があることなど準備する必要があります。
性犯罪について、告訴の期間に限りはありませんが、性犯罪以外は、犯人を知った時から6か月で時効になるため注意が必要です。なお、被害者の方以外が犯人の処罰を求める手続きは、「告発」といいます。
捜査
警察、検察が告訴状を受理した場合は、捜査が行われます。
もっとも、直ちに加害者を逮捕などするとは限らず、実際に捜査活動が行われるのにかなりの時間がかかる場合も十分ありえます。
また、被害者の方も、警察、検察からの事情聴取を繰り返し受けるなど、負担がありえます。
裁判
警察、検察の捜査を経て、検察官が起訴すべきかを判断します。
起訴されたら、加害者が裁判を受けることになります。
そして、裁判で有罪と判断されれば、加害者が処罰されることになります。
刑事手続に参加(被害者参加)
一定の事件については、刑事裁判に、被害者(ないしその代理人)が参加して、尋問や質問をしたり、処罰についての意見を求めたりする制度があります。
損害賠償命令制度
一定の重大事件については、被害者が刑事裁判の審理中に申し立てることで、有罪判決が言い渡された後、引き続き損害賠償命令の審理が行われます。
同じ裁判所が、刑事裁判の引き続き損害賠償命令の審理を行うことで、被害者が損害を証明する負担を軽減し、簡易迅速な被害回復を図ろうとする制度です。
4 ご依頼・ご相談
当事務所は、刑事事件の被害者の方からのご依頼、ご相談についても対応しております。
加害者との損害賠償の交渉、民事訴訟、告訴状の作成、刑事手続への参加など、ご依頼やご相談をご希望の方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。