刑事弁護コラム
近接所持の法理
刑事事件において,窃盗犯罪などで近接所持の法理というものがあります。
近接所持の法理とは,窃盗事件が起きた時点と時的・場所的に近いときに盗品を所持していたものは,その盗品の入手経路について合理的な説明をしない限り犯人と推定できる,というものです。
例えばある店から商品が盗まれ110番通報したところ,近くの路上にいた男が盗まれた品を所持しいていた場合,なぜ持っているかをきちんと説明できなければ,犯人の可能性が高い,ということです。
例えば,拾ったとか第三者からもらったとか,ということが考えられますが,それ自体合理性があるかどうかは吟味されます。
刑事裁判では,検察官が常識に照らして間違いない、といえる程度に被告人が犯罪を犯したことを立証する責任がありますが,財産犯(窃盗,強盗)においてこの近接所持の法理は,犯人が誰であるかが争われている事件で,検察官がよく主張します。
たしかに一般論としては正しい面もあるのですが,近接所持の法理といっても,どの程度の時間や距離の幅までが近接所持と言えるのか,また,その物品の流通状況等によって,間違いないといえるレベルは変わってきます。
刑事裁判で,近接所持を争う場合にも,そもそも個別の事件において,その物品を所持していることがどのような意味を持つのかを十分に吟味する必要があるのです。
保釈請求 身元引受人を誰にするか
起訴されて刑事裁判を受けることになった後,保釈の請求をすることができます。
保釈の請求にあたっては,身元引受人の身元引受書を求められるのが実務の運用です。
身元引受人は,必ずしも両親,夫,妻,子供といった家族に限られるものではありません。 (さらに…)
少年審判での証人尋問
少年事件では,成人の刑事事件と大きな違いがあります。その違いの一つが,伝聞法則の適応がない上に,職権で証拠調べがされるということです。
刑事事件の判決期日
刑事裁判の審理
刑事事件で起訴されると公判審理が行われます。 (さらに…)
余罪が疑われる場合の保釈請求
逮捕されて勾留という身体拘束を受けた場合,起訴されるとそのまま身体拘束が続きます。一方で,起訴されるまでは保釈の請求はできませんが,起訴されて刑事裁判を受けることになれば,保釈の請求をすることができます。
保釈の請求を認めるかどうか判断するのは裁判所です。
その判断において,罪証隠滅をすると疑うに足りる相当の理由があるかが問題となります。 (さらに…)
少年事件の特徴
起訴猶予がない
20歳未満の人が犯罪を行い,またはその嫌疑をかけられた場合は,その事件は少年事件として,成人の刑事事件とは別の手続で扱われます。
少年事件と成人の刑事事件の手続には様々な違いがありますが,実務上注意すべき特に大きな違いは以下の3点です。
まず,いわゆる「起訴猶予」にあたる処分がないということです。少年の刑事事件の場合も検察官が捜査をしますが,犯罪の嫌疑があると思料するときは,家庭裁判所に送致しなければなりません。つまり成人の刑事事件では,被害者との示談成立等の事情を考慮し,検察段階で事件が不起訴で終結することがありますが,少年事件の場合はそのような考慮はされないということです。
審判での活動と期間制限
2点目に,家庭裁判所での審判は裁判官が中心となって行う(職権主義)ということです。そして,成人の刑事事件と異なり,起訴状一本主義がないため,すべての証拠が家庭裁判所に送られ,裁判官はそれに目を通します。審判が行われる前に,心証は形成されていきます。ですから,付添人(弁護人に相当する立場の弁護士)は審判前に裁判官に意見書を提出し,または面会するなどして,一方的な心証が形成されることを食い止めなければなりません。審判の場での一発勝負ではなく,継続的,連続的な説得活動が期待されているということです。
3点目に,厳しい法律上の期間制限があるということです。在宅の事件の場合は別ですが,観護措置が取られた場合(主に少年鑑別所に送致された場合)には,収容期間は原則2週間で,更新は1回までとされています。つまり収容期間は原則として1か月であり,その間に審判が行われ,結論が下されます(一部の事件につき証人尋問を行うことを決定したものなどについては,更に最大1か月の亢進が可能とされています)。ですから付添人が準備にかけることができる時間は短く,集中して審判の準備を行う必要があります。
少年事件で適切な弁護活動を行うには,特に事実を争う事件でベストな弁護活動を行うためには,成人の刑事事件についてのノウハウだけでなく,上記のような少年事件特有の感覚を身に着けていることも重要となります。
少年事件の弁護活動は弊所にご依頼ください。
緊急事態宣言下での弁護人による接見
以前当コラムでもお伝えしたように,拘置所では弁護人以外の方による面会・差し入れが「一律」禁止となっています。
今回は,このような状況下でも接見をすることが許されている弁護人は,実際にはどのような手順で面会をしているかについてご紹介します。
東京拘置所では,門を通過した後,入り口で弁護士バッジか身分証の提示をもとめられ,弁護人であるかどうか確認されます。確認がとれた場合にはじめて建物内への立ち入りを許可されます。その後通常どおり受付で面会を申し込みますが,消毒液のボトルが設置されており,強制ではないにせよ手指の消毒をするよう求められています。なお,マスクの着用も求められていますが,マスクがない場合に接見を拒否されることまではないようです。
申込終了後,接見室にいたるまでの通路には体温センサーが設置されており,体温のチェックがされています。また接見室内では接見者と被収容者の間の空気穴がビニールシートでふさがれています。
当然のことながら,弁護人も外部からウィルスを持ち込むリスクがあるため,細心の注意を払う必要があります。もっとも,直接の面会にはどこまでいっても感染のリスクがあります。
直接面会する以外の方法で,弁護人や一般人とやり取りをすることはできないのでしょうか。日本ではごく例外的な場合にしか電話での接見は認められていません(電話接見ができるのは弁護人に限られています。)。スカイプ等による通信も,メール通信すらみとめられていません。諸外国と比較しても,外部交通の方法が極めて限定されているのです。昨今の情勢を踏まえれば,外部交通の方法を直接の面会に限るという制度の在り方が本当に合理的と言えるのか,再検討されるべきでしょう。
コロナと接見禁止
新型コロナウイルスによる感染を防止する目的で,緊急事態宣言が発令された7都府県の拘置所で一般面会が原則禁止されることが法務省から発表されました。 (さらに…)
逮捕された事件の余罪取調べ
逮捕されると警察,検察の取調べを受けることになります。
逮捕の理由となった犯罪事実だけではなく,他にも余罪が疑われる場合は他の犯罪事実についても取調べを受ける可能性があります。
逮捕の後,さらに勾留という最大20日間の身体拘束を受けて取調べを受け続ける可能性があります。 (さらに…)
証拠等関係カード
刑事裁判の中で出てくる証拠には名前がついています。 (さらに…)
« 前のページ 次のページ »