―捜査の端緒(はじまり)―
事件が発生し、捜査機関が事件を覚知すると、捜査が始まります。
捜査機関が事件を覚知するのは、職務質問などの捜査機関側の活動の他、被害者からの告訴、犯罪を発見した第三者による告発などによります。
―捜査段階―
捜査機関の捜査は、大きく二つに分類できます。
1.在宅捜査
在宅捜査とは、被疑者(罪を疑われている人)を逮捕することなく行われる捜査です。捜査機関が被疑者を呼び出して取調べを行ったり、関係者からの事情聴取その他の証拠収集を行ったりします。
2.逮捕、勾留
一方、被疑者を逮捕して身体を拘束した上で捜査を行う場合もあります。
逮捕された場合、検察官が勾留(逮捕に引き続き、さらに身体を拘束すること)を裁判官に求めるかどうかを決めます。
検察官が勾留を求め、裁判官が認めた場合、最大で20日間、身体拘束が続くことになります。その間、捜査機関は被疑者の取調べを行うほか、証拠収集活動を行います。
なお,これらの捜査(在宅捜査・逮捕,勾留)は,いずれか一方と限りません。たとえば、在宅捜査が暫く続いた後逮捕されることもあります。逮捕されたが釈放され、在宅捜査が続くこともあります。
捜査が完了すると、検察官が被疑者を起訴(裁判にかけること)するかどうか決めます。
逮捕勾留された事件では、逮捕勾留の期間満了時に処分が決まるのが一般的です。不起訴(裁判にしない)になれば、事件は終了です。
なお、起訴処分には、「略式起訴」といって、正式な裁判ではなく、罰金を納付して事件が終了する処分もあります。身体拘束を受けている被疑者は釈放されます。
弁護人の役割
1.接見
逮捕された場合には、拘束場所に弁護士が会いに行きます(これを接見といいます)。
接見では、ご依頼人から事件に関する事情を細かに聞き、取調べや捜査に関するアドバイスを行います。
取調べは日々続くため、頻繁に接見をし、事情を聞くことが何よりも重要です。
在宅事件では、直接の打ち合わせを通じて、同様のことを行います。
2.身体拘束解放に向けた活動
逮捕されて身体が拘束されている場合には、釈放に向けた活動を行います。
ご依頼人を釈放すべき事情を裁判官に伝えたり、そのための証拠を集めたりという活動が中心となります。
3.不起訴に向けた活動
捜査段階では、なによりも不起訴処分を獲得することが最大の目標となります。
そのために、ご依頼人に代わって被害者と示談を行ったり、被疑者を起訴すべきでない事情を捜査機関に伝えたりします。
また、無罪・無実を主張する事件では、取調べに対するアドバイスを通じて取調べに対応するほか、無実を示す証拠の収集活動を行います。
―公判(裁判)段階―
検察官が被疑者を起訴すると、被疑者は「被告人(裁判を受ける人)」となり、裁判を待つ身となります。裁判にかかる時間は、事件によって異なります。簡易な事件で、罪を認めている事件では、1ヶ月~2ヶ月程度で終了する場合もあります。
一方、無罪を主張する事件や裁判員裁判事件などの事件は、3ヶ月程度から数年単位までかかる場合もあります。
裁判では、検察官と弁護人がお互いに証拠を提出したり、証人や被告人の話を聞いたりという手続を行います
弁護人の役割
1.保釈
保釈とは、起訴された後、一定の金額を納めて、身体拘束を解放することです。
納めたお金は何もなければ裁判後に帰ってきます。
捜査段階での釈放が難しくても、保釈はそれに比べれば認められやすいものです。一刻も早く身体拘束が解放されるよう、保釈の請求をします。
2.刑を軽くするための活動
罪を認めている事件では、できるだけ刑を軽くするための活動を行います。
たとえば、被害者と示談を行い、その結果を裁判所に提出したり、二度と犯罪を繰り返さないことを裁判所に伝えたりという活動です。
3.無罪を争う活動
無実を主張する事件では、検察官の立証に徹底的に対抗し、証人を尋問し、弁護側でも無罪に結びつく立証をし、無罪獲得のための活動を行います。
―判決とその後―
裁判が終結すると、判決の言い渡しが行われます。
有罪判決の場合には、被告人側は、控訴(高等裁判所へ不服を申し立てること)をすることができます。無罪判決が出たとき、検察側が控訴をすることもあります。
控訴をした場合には高等裁判所で審理が行われ、更に不服がある場合は上告(最高裁判所へ不服を申し立てること)ができます。控訴・上告を双方がしなかったとき、及び上告審の判断が出たとき、裁判の結果は確定します。
手続の流れ