「伝聞証拠」とは「また聞き」の証拠
刑事訴訟法で、「伝聞証拠」という概念があります。
たとえば、Aさんが証人として出廷して「「被告人が被害者を殴るのを見た」とBさんが言っていました」と証言した場合が典型的です。このAさんの話は、Bさんの話をまた聞きしたものです。
AさんがBさんの話を聞いたこと自体が本当かどうかは、法廷でAさんの証言を聞いて、Aさんにいろいろな質問をしてAさんがどう答えるかを吟味することで、判断することができます。
しかし、Bさんの目撃証言が本当かどうかは、直接Bさんに尋問をして確認することができません。Aさんにいくら聞いても、「Bさんがそう言っていただけなので、Bさんが本当に見たのかは知りません」としか言いようがありません。本当はBさんに見間違いや記憶違いがあるかもしれません。でも、Bさんにそれを直接確認せずに、殴ったことにされてしまったら、間違った裁判が起こってしまう可能性があります。
そこで、刑事事件では、こういうまた聞きの証拠の利用を禁じています。こういう種類の証拠を「伝聞証拠」といいます。これは、Bさんの供述が、Bさんの書いた書面に書かれている場合に書面を証拠にしようとする場合でも同じです。なぜなら、その書面に書かれていることが本当か、Bさんに確認することができないからです。
法廷でも異議を述べる
ここまでは比較的わかりやすい話ですが、何が伝聞証拠であるかは、その証拠で何を証明しようとするかで変わるため、法廷ではしばしばその証拠を採用できるかどうかが争いになります。伝聞証拠に関する正確な知識を持った弁護人が、伝聞証拠に対してはその採用に適切に異議を述べることが重要です。