犯罪を起こそうとする人には,様々な動機や目的があります。
犯罪の動機は量刑判断の重要な要素
例えばお金を盗むという窃盗罪を考えた時,多くは,お金に困ってお金が欲しくて盗むというものでしょう。
しかし,犯罪を起こす人の中には,自分自身はお金に困ってないが被害者に嫌がらせをしたいという動機の人や,盗むというスリル自体を味わいたいという人もいます。
殺人罪のような場合でも,相手に対する恨みである場合もあれば,保険金目的や,介護疲れや安楽死のような場合まで動機や目的は様々です。
このような犯罪の動機は量刑を決める上で重要となる場合があります。保険金目的で人を殺害した場合と,介護疲れで殺害した場合とでは,同じ責任とは言えないからです。
犯罪の動機は犯人性との関係では危険な要素にもなる
これは犯人であることが間違いない(有罪)の場合に,その刑罰を決める上では動機や目的を考慮することがあると言うことを意味するのですが,問題は犯人であるか否かが争われているような場合には,動機というのはとても危険なものになってしまいます。
例えば,被害者Aさんが殺害された犯人としてBさんが起訴されたとします。
AさんとBさんは普段から仲が悪く,Bさんが他人にAさんの悪口を言っていた,という証拠があったとします。このようなときに,検察官は,BさんはAさんを快くおもっておらず,殺害の動機がある,などと主張することがあります。
しかし,よく思ってない相手を殺すというのはあまりに飛躍がありますし,判断をする裁判所の立場にたてばAさんの交友関係を全て知ることはできないので,他にAさんに恨みを持っている人がいるかもしれません。あるいは全くの赤の他人が犯人かもしれません。
動機があるから犯人であるという思考過程はとても危険なものなのです。
しかし,実際に法廷で判断する立場にたつと,動機がある人が怪しく見えてしまいます。
判断をする際には,意識的に動機があることと犯人であることは関係ないと考えておくか,そもそも動機があるかどうかという不明確な証拠は法廷に出すべきでない,とするのも1つの手段でしょう。