DV事件で逮捕されたら

コロナ禍の下、DV事件は増加している

 

新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う外出自粛の影響か、家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス。いわゆるDV。)の相談件数が過去最多となっている、とのニュースに触れました。普段は共に自宅で過ごす時間の少ない夫婦や家族が、長時間顔を突き合わせることにより、暴力を振るうといったケースが増加し、顕在化しているようです。

 

DVはれっきとした刑事事件です。配偶者や親、子に暴力をふるった場合、それだけで暴行罪(刑法208条)に該当します。相手が怪我をした場合、それが打撲や挫創などの比較的軽微な怪我であっても、傷害罪(刑法204条)が成立します。事実に間違いがない場合は、刑罰を受けることになります。

 

DV事案への捜査機関の取り組みと、勾留のリスク

 

捜査機関は、伝統的には、「法は家庭に入らず」との考えの下、家庭内暴力の事件で被害者が被害を申告したとしても、捜査に着手することに消極的でした。しかし、近年DVの増加が社会問題化するようになり、現場の弁護士から見ても、警察の対応がより積極的になってきた印象があります。また、継続的に暴力行為が行われ、被害者が何度も警察に被害相談を繰り返していたような場合は、警察も積極的に捜査をする傾向があります。

 

他方で、事案によっては、夫婦喧嘩の延長に過ぎないようなものもありますし、そもそも一方当事者が被害を過大に申告するか、本来ない暴力被害を訴えるという事案もないわけではありません。このような場合でも、警察が捜査に着手した場合、一方当事者である被害者の言い分を基本的に前提として捜査をすすめますので、冤罪のリスクがあります。

 

さらに、DV事件では逮捕された後、勾留が相当期間継続する傾向があります。勾留することができる条件の一つに、罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由があること、というものがありますが、想定されている罪証隠滅行為の典型例が、被疑者に被害者が接触して、被害を取り下げるように圧力をかけたり、供述をかえさせたりする、という行動です。夫と妻、あるいは親と子といった、一定の力関係があり、さらに居住先を同じくしていて容易に接触できる間柄の場合、簡単に上記のような罪証隠滅行為がなされてしまうはずだ、と裁判官は考えるのです。

 

家庭内でいさかいはあったが、暴力まではふるっていない、それなのに見に覚えのないDV行為で逮捕されてしまったーこのような場合、①いかに勾留をつけさせずに、早期に釈放を勝ち取るか②いかに刑事罰を受けることを避けるか、という点がポイントになります。

 

いかに早期釈放を勝ち取るか

 

裁判官に勾留をつけさせないためには、まず被害者と被疑者が容易に接触できない環境を整備し、互いに直接接触しない状況を維持できることを、裁判官にアピールする必要があります。

典型的なケースでは、被疑者が自らの実家に一時的に転居し、刑事事件が終結するまでの間はそこで生活をする、という提案をします。勿論、引っ越し作業等も被疑者家族の協力を得て行い、被疑者が直接被害者と接触することがないように細心の注意を払います。もっとも、単に実家に戻るというだけでは、容易に会ったり電話をしたりすることができる、との理由で勾留がつけられることもありますので、連絡手段についても手当は必要ですし、裁判官によっても判断は大いに分かれるところだと思います。

 

もう一つのアプローチは、示談交渉になるべく早期に着手するということです。全くの事実無根の場合は、示談等をするのも変ですが、喧嘩や揉み合いにはなったが暴力まではふるっていない、というようなケースの場合、揉み合いになったこと等については謝罪をし、示談をするということもあります。また、DV事件の一部では、被害者も興奮して警察に通報したものの、そこまで大事にするつもりはなく警察に調停してもらう程度のつもりだったのに、予想に反して警察が逮捕してしまい、大事になってしまった、というような経過をたどる事件もあります。このような事件では、被害者と弁護人が早期に連絡をとり、手続について説明し、相互の冷却期間をおくこと等を条件に早期に示談し、また被害届を取り下げてもらう、というアプローチが考えられます。このような交渉が相当程度煮詰まっており、早期の示談成立が見込めるのであれば、勾留がつかないことも十分あります。もっとも、被害者の処罰感情が極めて強い場合や、当方に全く暴力や暴行をした事実はなく、被害者の主張する事実との間に大きな開きがある場合などは、このアプローチは困難です。

 

冤罪を避けるための公判活動

 

DV行為があったと検察官が判断し、起訴されてしまった場合、どのように対処すべきでしょうか。実際には暴行をふるっていない、という場合、まさに冤罪の危険にさらされます。公判では、被害者の証言の信用性が一番の争点になります。被害者の証人尋問で、いかに被害者の言い分がおかしいか、弾劾することが必要不可欠となりますし、他の客観的な証拠との矛盾をつくなど、事件全体の証拠を無理なく説明する戦略を立てた上での弁護活動が必要不可欠となります。事件によっては、被害者に生じたとされる怪我の原因を明らかにするため、法医学者などの専門家による鑑定や尋問が必要となる場合もあるかもしれません。

公判で弁護活動が成功し、無罪判決を獲得できるか否かは、弁護人のスキルに大きく左右されます。弊所は徹底的に争う事件を数多く取り扱い、尋問技術や公判での説得技術について研鑽を積んできた弁護士のみが所属しております。

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