「科学的な証拠」というと,とても証拠の価値が高いような気持ちになります。
科学的証拠には冤罪を生む危険もある
DNA鑑定,指紋鑑定,医学,薬物化学・・・どれも,一般の人たちにはわかりにくい一方,「専門家の意見」という外見をとるため,信用できるように見えてしまうのです。
しかし,こうした「科学的証拠」が,これまで冤罪を生んできた歴史があります。当時最先端の技術とされたDNA鑑定の方法が問題となって,のちに冤罪が明らかになった足利事件は記憶に新しいところです。
「科学」「医学」「化学」といった文字に騙されずに,きちんとその内容に根拠があるのか,論理にかなっているのか,常識にかなっているのか,私たちもきちんと中身を検討しなければいけません。
弁護人としても,依頼人が冤罪,無実を訴えているのに,科学的証拠があるからといってそれに屈するわけにはいきません。きちんと弁護人も科学的証拠の内容を検討し,不合理と思われる部分を徹底的に反論する技術が必要となります。