合理的な疑いの具体的な呈示

有罪となる条件 

刑事裁判では,証拠を検討した結果,常識に従って判断し,被告人が罪を犯したことが間違いないと言える場合でなければ,有罪とすることはできません。常識に従って判断し,被告人が罪を犯したことに疑問が残るときは,無罪としなければならないのです。
ここでいう「疑問」とは,罪を犯していないのではないかという可能性をいうと考えればわかりやすいです。

とはいえ,裁判とは証拠に基づいて過去に何があったかを推測する手続ですから,科学的に間違いないことを証明することはできません。そこで,「常識に従って判断すれば」間違いない,という証拠による証明ができているかを考えることになります。

弁護人は何をしなければならないか

こうした基準を用いて裁判所が有罪を言い渡すとき「弁護人が主張する仮説は,抽象的な疑いにとどまる」という言い方をするケースが多く見られます。抽象的には無実の可能性はあるけど,常識的に判断すれば現実的にそれはありえない,という判断です。
 こうした判断にならないためには,無罪を主張する弁護側が,具体的な無実の可能性を提示する必要があります。これは主張として具体的にどういう無実の可能性があるのかを指摘するのはもちろん,裁判の中の証拠の提出や証人尋問を通じて,無実の可能性があるのではないかという具体的で現実的な可能性を示すべきです。

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