刑事裁判での保釈
刑事訴訟法では,原則として保釈が権利として認められています。しかし,刑事事件の一審判決で実刑判決を受けると,原則として保釈は権利ではなくなり,裁判所の裁量による保釈のみが認められるようになります。
これは,実刑判決を受けたことによりそれまでの無罪推定の状況が失われること,逃亡の可能性が高まるため身柄の確保が必要になることがその趣旨であるとされています。
実刑判決後の保釈
しかし,実刑判決後に保釈をされない例が多いかというと,そうでもありません。実刑判決を受けたということは,その事件の裁判の審理がほぼ終わっていることを意味します。そうすると,事件の証拠を隠滅したりする可能性は低くなり,あとは控訴や上告によって第一審の裁判が正しいかどうかが検証されるのを待つ状況になります。
保釈保証金納付によって逃亡は一応防止できると考えられているので,この段階では裁判所も裁量で保釈することが少なくありません。事件の内容にもよりますが,実刑判決を受けた場合も,あきらめずに保釈を請求することが重要です。
保釈の請求は,控訴をするまでは原審弁護人が行うことができます。控訴した後は原審弁護人は弁護人の地位を失いますが,私選弁護人を新たに選任したり,あるいは自分自身での保釈請求であれば,すぐに保釈の請求をすることができます。控訴審の国選弁護人に頼むこともできますが,控訴審の国選弁護人がつくのは,第一審で実刑判決を受けてからしばらくたってからとなっています。