刑事裁判の証人尋問における異議

「異議あり!」

検察官の証人に対する不当な尋問に対して,弁護士が異議を出す。そんな刑事裁判のドラマのシーンがよくあります。
実際の刑事裁判ではどのような場合に異議が出されるのでしょうか。

証人尋問では,証人の尋問を請求した方が最初に尋問(主尋問)を行い,その後で相手方が反対尋問を行います。
主尋問では,誘導尋問は原則として許されません。
誘導尋問とは,尋問者が望む答えを暗示する質問です。
多くは,質問の中に尋問者が望む答えの内容が入っていて(例えば,「犯人の顔を見ましたか」,「犯人はこの裁判を受けている被告人でしたか」など),はい,いいえで答えられる質問です。
証人は,自分の記憶に従って証言することが求められます。
しかし,誘導尋問がなされると,記憶にしたがった証言ではなく,尋問者が期待する証言をしてしまい,間違った判断がなされてしまう危険があります。
このため,主尋問で誘導尋問は原則として許されていません。

許されない尋問

 

他にも,立証しようとする事項に関連性のない尋問は許されません。
関連性のない尋問は不必要であるのみならず,証言がなされることで不当な印象などを与える危険があります。
個別的,具体的でない尋問も許されません。
こうした尋問がなされることで,記憶がある部分とない部分,きちんと見た内容とそうでない内容などが,区別されずに証言されてしまったりする危険があります。
また,意見を求めたり,議論にわたる尋問や,証人が直接経験しなかった事実についての尋問なども原則として許されません。
こうした許されない尋問については,刑事訴訟法規則という法律で規定がなされています。

しかし,許されない尋問がなされても,弁護士が適切に意義を述べずに証人が証言してしまったら,その証言が証拠になってしまいます。
弁護士として,許されない尋問についての理解と,許されない尋問がなされた場合に即座に適切に異議を出す技術が求められます。

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