刑事事件では、被害者に対して損害賠償を行い、被害者との間で和解をする(一般的に「示談」といいます)ことが処分を決めるうえで重要になることがあります。
特に、痴漢事件や傷害事件など、示談を行うことができれば不起訴処分や罰金などの処分が見込まれる場合や、示談の有無で実刑か執行猶予かが左右されるような事案の場合には、示談の重要性が高まります。
連絡先を教えてもらう
弁護人が示談を行う場合、被害者が依頼人の知り合いであるなどの特別な場合を除いて、被害者の連絡先が判明しない場合は多いものです。そこで、まず弁護人は、担当の検察官に連絡して、被害者の連絡先を教えてもらえるよう依頼します。検察官は、この依頼を受けて、被害者に、弁護人に連絡先を教えていいかどうかを尋ねます。被害者は、検察官の連絡を受けて、弁護人に連絡先を教えていいかどうかを検察官に伝えます。
ここで、もし被害者が弁護人に連絡先を教えることを拒めば、弁護人は示談に着手することすらできません。絶対に示談はしたくない、と示談を拒む被害者は珍しくありません。
連絡して交渉
被害者が弁護人へ連絡先を教えてよいといえば、弁護人は被害者に連絡し、示談交渉をします。この交渉の中で、示談の条件や、損害賠償の額などを交渉していきます。示談はお互いの意思に基づく和解ですから、その条件が被害者にとって納得のいくものでなければ、合意をすることはできません。
このように、示談は被害者の意向に左右される面が非常に大きいものです。もちろん、そのような中でも弁護人が最大限の交渉をすることはその責務なのですが、弁護人の腕だけで示談のすべてを左右できないということに注意をする必要があります。インターネット上などでは「示談に強い」などと大々的に宣伝する事務所も多くありますが、示談というのはもともとそういう性質を持っている弁護活動なのです。