無罪判決が確定した場合、国に対して、身体拘束されていたことへの金銭的補償と、裁判に要した弁護士費用の請求をすることができます。
身体拘束に対する補償:刑事補償
身体拘束されていたことへの金銭的補償が、刑事補償です。逮捕されて拘束されれば、身体の自由がなくなりますし、その間仕事もできず、精神的な苦痛も計り知れないものになります。そういった損害を金銭的に評価して、被告人に補償するのです。拘束されている間の損害は計り知れないものですが、現在の制度では、最大でも一日当たり12500円しか補償されません。しかも、すべての事件で満額の補償が認められるわけではありません。無罪の理由や、捜査や裁判の進行がどうであったかなどを考慮して、金額を裁判所が決めることになっています。
弁護士費用の補償:無罪費用補償
訴訟を行うにあたってかかった弁護士費用を補償するのが、無罪費用補償です。これは、弁護士を依頼するのにかかった費用を金銭的に補償するものですが、これも、実際に支払った弁護士費用の全額が国から補償されるわけではありません。たとえば、その事件で国選弁護人が選任されたら国選弁護人に支払われる報酬額などを基準として決められ、私選弁護でそれ以上の費用を払っていても、補償されない場合があります。
これらの刑事補償・費用補償が不十分な場合には、その決定に対して不服申し立てをすることができます。しかし、費用の決定は裁判所の裁量によるところも多いため、不合理なものとして取り消されるケースは、必ずしも多くないと思われます。
先日当事務所で扱った無罪事件でも、刑事補償・費用補償が満額認められなかったため、不服申し立てをしましたが認められなかった事例がありました。身体拘束をされるだけでも相当な不利益があるにもかかわらず、これに対する補償は、十分なものとはいえません。