公訴事実に争いがない刑事裁判 第一審手続の流れ

逮捕され起訴されて初めて刑事裁判を受けることになった。
初めてのことでご不安な方やそのご家族の方もいらっしゃると思います。
裁判員裁判対象事件ではなく,起訴状の犯罪事実に争いがない場合,刑事裁判の審理は1回で終わり次回に判決言い渡しとなるのが多いといえます。
こうした刑事裁判の手続の流れや準備についてご説明します。

起訴から第1回公判までの流れ・準備

■公判までの準備

起訴されると起訴状の写しが送られてきます。
審理の対象となる犯罪事実,罪名が記載されています。

第1回公判の日は,起訴されてから1,2か月程度先の期間の日となるのが通常です。
第1回公判までの準備としては,
 ・検察官が請求する証拠の開示を受け,意見の検討
 ・弁護側から請求する証拠の検討,準備
 ・家族などの情状証人の準備
 ・被告人質問の準備
を行う必要があります。

また,こうした準備のために,
 ・検察官から請求する証拠以外の証拠の開示を受ける
ことも重要です。
検察官の下には裁判で証拠請求する以外の証拠が多く集められています。
こうした証拠については,弁護人から求めなければ検察官から証拠を開示されないままです。

■保釈

逮捕,勾留されて捜査を受けて起訴された場合,起訴後も引き続き勾留が続いて身体拘束を受けることになります。
起訴後は保釈の請求が出来ます。
保釈の請求に対して保釈を認めるかどうかは裁判官が判断します。
罪証隠滅や逃亡のおそれがあるかや保釈を必要とする事情などが判断で問題となります。

裁判官が保釈を認めた場合は,裁判官が決めた保釈金を納めれば釈放されます。
保釈に当たっては,指定された住所に居住すること,裁判期日に出頭すること,逃げ隠れしたり,罪証隠滅と思われる行為をしないこと,3日以上の旅行をするときは事前に裁判所の許可を得ることなどの条件を付されるのが通常です。

■第1回公判の手続の流れ

裁判員裁判対象事件ではなく公訴事実に争いがない事件の刑事裁判の審理は,1回1時間程度で終わるものが多いといえます。

裁判の出席者は,刑事裁判を受けている被告人ご本人,弁護人,検察官,裁判官です。
刑事事件を起訴して刑事裁判を行うのは検察官で,捜査段階で取調べ等を担当した警察官は刑事裁判の当事者として出席はしません。

手続は大きく3つで,
 ■1.冒頭手続
 ■2.証拠調べ手続
 ■3.論告・弁論・最終陳述
の順で行われます。

被告人ご本人が証言台で発言する場面もこの3つの場面それぞれで,
 ■1.冒頭陳述において人定質問,罪状認否に答える
 ■2.証拠調べ手続の被告人質問に答える
 ■3.最終陳述において意見を述べる
ことになります。

■1.冒頭手続

冒頭手続は,
 1)人定質問
 2)起訴状朗読
 3)黙秘権の告知
 4)被告事件に対する陳述
が行われます。

1)人定質問

冒頭陳述において,まず被告人に対して人定質問が行われます。
刑事裁判を受ける被告人が本人であるかを起訴状に書かれてある氏名,生年月日等を質問して答えてもらうことで確認する手続です。

裁判官から証言台の前に立つよう指示された上,
 ・名前
 ・生年月日
 ・本籍
 ・住所
 ・職業
を質問されます。

2)起訴状朗読

次に,起訴状の朗読が行われます。
検察官が,起訴状に書かれている公訴事実,罪名,罰条が読み上げられます。

3)黙秘権の告知

続いて,裁判官から黙秘権の告知があります。
終始沈黙することもできること,個々の質問に対しある質問には答え,ある質問には答えないとすることもできること,質問に答えた内容については自己有利不利を問わず裁判の証拠になるということが説明されます。

4)罪状認否

その上で,一般に罪状認否と呼ばれる手続が行われます。
裁判官から,起訴状に書かれてある公訴事実について,どこか違っていることがあるかということを尋ねられます。
被告人に続いて,弁護人にも意見が求められます。

■2.証拠調べ手続

1)冒頭陳述

冒頭手続が終わった後,証拠調べ手続が行われます。
刑事裁判において,有罪を立証をする責任は検察官にあります。
まず,検察官が冒頭陳述を行います。

冒頭陳述は,証拠調べの冒頭において証拠によって証明しようとする事実を明らかにする手続です。
検察官から,犯行に至る経緯,犯行状況,犯行後の事情などが簡潔に述べられるのが通常です。
弁護人からの冒頭陳述は,弁護人から求めなければ実施されません。

2)検察官の証拠調べ

検察官の冒頭陳述の後,検察官が請求する証拠のうち,弁護人が同意した証拠書類や異議のない証拠物についての取調べが行われます。
証拠書類について,その内容を逐一読み上げられるのではなく,その要旨を告げられるのが通常です。

3)弁護人の証拠調べ

検察官が請求した証拠の取調べが終わった後,弁護側の証拠の取調べが行われます。
検察官の請求証拠と同様に,検察官が同意する証拠書類や異議のない証拠物の取調べや,異議のない証人の尋問が行われます。

4)被告人質問

そして,最後に被告人質問が行われるのが通常です。
被告人質問は,被告人自身が証言台に立って質問に答えます。
まずは弁護人からの質問に答え,次に検察官からの質問があり,最後に裁判官が質問します。
当時の生活状況,犯行に至る経緯,犯行状況,犯行後の状況といった犯行に関わる内容や,逮捕,起訴後の反省や今後の生活など一般的な情状に関わる事項について話してもらうことが通常です。

■3.論告・弁論・最終陳述

証拠調べが終わった後は,まず検察官から論告・求刑を行います。
起訴状に書かれてある公訴事実について証明十分であるとした上で,判決で言い渡されるべき刑の重さに関する主張を行い,検察官として懲役何年などとの求める刑の重さを述べます。

その後,弁護人が執行猶予や懲役何年が相応しいとする意見について述べます。

最後に,裁判官から審理を終わるにあたって被告人に何か言いたいことがあれば述べる機会を与えられます。
すでに被告人質問で話した内容を重なることが多いと思いますが,改めて反省や今後の更生について等を述べることが通常といえます。

第一審の判決言い渡し

■判決言い渡し期日

第一審の判決期日は,争いがない事件であれば第1回公判の1,2週間程度後の日にされることが通常といえます。
判決期日においては,被告人が何か質問されたり発言したりすることは予定されていません。

まず,裁判官から,被告人に対して証言台の前に立つよう指示があります。
その上で,裁判官から懲役何年などとの科す刑の結論が言い渡されます。
そして,その理由として,認定した罪となるべき事実や量刑の理由について説明があります。

判決の言い渡しがあった後,被告人に対して判決に不服があれば明日から14日以内に控訴することができることや控訴申立書の宛先,提出先についての説明があり,判決期日が終わります。

判決内容は口頭で言い渡されるもので,判決書については写しを交付するよう申請しなければ入手できません。
また,判決書の写しをすぐに入手できるとは限らず,入手未了のままで控訴するかどうかを検討しなければならないこともあり得ます。

■実刑判決後の保釈

保釈されていて実刑判決を受けた場合は,判決の言い渡し後,そのまま身体拘束を受けて勾留を受けることになります。
再度,保釈の請求をすることは可能です。
控訴申し立てを行う前に保釈の請求をすることも可能です。
再度の保釈を認めるかどうかは裁判官が判断します。
再度の保釈が認められた場合でも,保釈金の金額は第一審で認められていた額より増額されるのが通常です。

 
 
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