公判前整理手続では証拠開示請求が可能となる
裁判員裁判では必ず公判前整理手続が行われます。公判前整理手続とは,実際の裁判が始まる前に,どのような点を裁判の争点にするか,どのような証拠を,どのような順番で実際に裁判で取り調べるかを話し合う手続きです。
公判前整理手続は,検察官からの請求証拠の開示から始まります。請求証拠とは,平たく言えば,検察官が裁判所に見てもらいたいと考える証拠です。しかし,検察官や警察官が起訴するまでに収集した証拠は,もちろん請求証拠だけに限られません。捜査機関は起訴までに多数の人員を使い,時間をかけて膨大な証拠を集めています。その中の一部,まさに氷山の一角だけが,請求証拠として選別され,弁護人に開示されるのです。開示されない膨大な証拠の中に,弁護人が弁護方針を立て,あるいは尋問の準備をするために重要なものが含まれていることも非常によくあります。そのためにあるのが,証拠開示請求です。
開示請求請求を徹底的に行う技術
刑事訴訟法上,一定の要件を満たす場合,捜査機関が保有している証拠を開示するように弁護人から請求することができます。どのような証拠の開示を求めるか,どれくらい幅広く開示を求めるか,要件に該当することをどのように的確に請求書に記載するか,といった点が,弁護人の腕の見せ所となります。検察官が開示を拒否した場合,裁判所に裁定を求め,開示の有無を争うこともあります。最近は,弁護人が証拠開示請求をする前から,検察官が任意に証拠を開示してくる場合や,裁判所が検察官に,任意に証拠を開示するよう促す場合もあります。しかし,検察官による任意の開示だけで満足してはいけません。公判で出されうる全ての不利な証拠を説明しうる,盤石の弁護戦略を立てるためには,とにかく幅広い証拠を収集し,漏れの無いよう,捜査機関が保持している証拠を取りつくす必要があります。弁護戦略を立てる上でネックとなる,捜査機関と弁護人の圧倒的な情報格差を,証拠開示請求を徹底的に行うことによって,はじめて是正することができるのです。さらに,証拠開示請求を幅広く行うことで,「どのような証拠を捜査機関が持っていないか=どのような点が捜査で手薄になっていたか」を把握することもできます。ですから,証拠開示請求を幅広く,漏れの無いように徹底的に行うことは,公判全体の帰趨を左右する,重要な第一歩なのです。
当事務所の弁護士は,公判前整理手続における証拠開示請求を行う際,どのような事案でも,捜査機関が通常どのような証拠を収集しているかを予測し,漏れがなく的確な証拠開示請求を行うとともに,証拠開示をめぐって検察官と対立した時も,決してあきらめず戦い抜いています。また,公判前整理手続に関する研修の講師を務める際には,証拠開示における考え方や具体的な方法論についても指導しています。