本日,裁判員裁判の第1審で有罪とされた事件が控訴審で逆転無罪となった事例がありました。
逆転無罪
第1審では信用された被害者の証言が,控訴審では信用できないとされたものでした。
日本の刑事裁判は三審制といって,地方裁判所で開かれる第1審,高等裁判所で開かれる控訴審,最高裁判所で開かれる上告審と,3回裁判が行われる制度となっています。
しかし,事実上第1審の裁判の結論が重視され,控訴審で第1審の裁判の結果が覆ることは滅多にありません。上告審で覆ることは,年に数件というレベルです。
裁判員裁判の場合,控訴審は裁判官だけで審理されます。市民が参加した裁判員裁判の結論を基本的には尊重すべきとの立場から,控訴審で結論が変わることは,通常の刑事裁判に比して数が少ないことが実情です。
無罪の推定
しかし,裁判とは,人が判断する以上誤ることがあります。市民が入って多数が決めるからといって間違うことがないわけではありません。過去の歴史を見ても,多数が決めた結論が誤りである場合があります。
裁判所とは本来,多数の横暴から少数者の人権を守ることに,その役目があります。特に刑事裁判には無罪の推定という大原則があります。間違っても無実の人を処罰してはならないからです。
一人の人を有罪として処罰する場合には,誰が判断しても有罪という結論に至るほど間違いないといえなければなりません。人によって有罪かどうかが変わるというのでは,あまりに不正義だからです。
第1審の判決に対して控訴審が,もしかしたら無罪かもしれないという疑いを持った場合には,無罪の推定の原則から,たとえ裁判員裁判で行われた判決であっても破棄すべきなのです。