証拠開示が命運を分ける
刑事事件の捜査において,捜査機関は様々な証拠を収集しています。被害者,目撃者など重要証人となる人物からも,複数回,事情聴取が行われて供述調書が作成されているのが通常です。
刑事裁判において,検察官が取調べを請求して弁護人に開示する証拠は,捜査機関が収集した証拠の一部にすぎません。
弁護士の活動として,他の証拠を開示させてその内容を検討することが重要です。
控訴審の証拠開示は消極的
第一審の裁判において,公判前整理手続に付された事件は,刑事訴訟法上,弁護人が検察官に対して証拠開示を請求する権利が一定の要件の下認められています。
公判前整理手続に付されていない事件であっても,弁護人が求めれば,検察官は比較的柔軟に証拠開示に応じるのが通常です。
しかし,控訴審においては,刑事訴訟法上,証拠開示に関する直接の規定はありません。
検察官も,控訴審においては弁護人の証拠開示に応じるのは消極的であるのが通常です。
このため,まずは第一審の弁護人において十分に証拠開示を行っておくことが重要です。
第一審において証拠開示が不十分で,控訴審から新たに弁護人になる場合,検察官が証拠開示に応じなければ,裁判所に対して,証拠開示の必要性,重要性を十分に説得すべきです。
解釈上,裁判所は検察官に対して証拠開示を命ずることができると解されています。
裁判所が検察官に証拠開示を命ずるまでは行わずとも,事実上,開示を勧告等することで,検察官から弁護人に対して証拠開示が行われることもあります。