犯罪を直接実行しない場合でも,実行した正犯と同じ責任を負う場合があります。それを共謀共同正犯といいます。
共謀共同正犯とは,犯罪を実行することの意思を通じ合うことです。
例えば,ヤクザの親分が配下の者に犯罪を命じて実行させた場合,親分も実行者と同等かそれ以上の責任があります。実行してないからといって責任を負わないわけではなく,共謀共同正犯として処罰されることになります。
この点について最高裁は,以下の様に判示しました。
練馬時件最高裁判決(昭和33年5月28日 )
「共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつで互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがつて右のような関係において共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。」
背後の首謀者や,実行したのに匹敵する場合には,正犯として責任を負うことになります。
直接実行しない類型として,教唆犯(他人をそそのかして犯罪を実行させる場合)や幇助犯(他人の犯罪を手助けした場合)もありますが,共謀共同正犯は,まさに自分の犯罪として他人を利用した正犯という違いがあります。
刑事裁判では,そもそも意思を通じ合ったか(共謀の有無),正犯か幇助かということで争いになるケースが珍しくありません。