共犯者が複数いる事件の場合,一人の容疑者(被告人)が,共犯者である別の被告人の裁判で証言を求められることがあります。
共犯者の証言
これは,非常に注意が必要な場面です。共犯者である別の被告人の法廷には,その事件で被告人らを訴追する立場の検察官がいるのはもちろん,共犯者である別の被告人の弁護人も,味方ではありません。唯一の味方になり得る自分自身の弁護人は,裁判に同席することはできず,その場で尋問に対する異議を出すなどの弁護活動を行うことはできません。自分の周りに,自分を糾弾する人たちしかいないような状況の中で,証言を強いられるのです。
そして,ここでした証言は,自分の裁判でも不利に扱われます。自分を糾弾する人たちしかいない状況でした証言が自分の裁判で不利に扱われるのは,捜査機関による取調べと同様,あるいはそれ以上に危険なことです。
幸い,こうした証言を求められる場面でも,自分自身(および一定の範囲の家族)が刑事訴追・有罪判決を受けるおそれがある事項については,証言を拒むことができるものとされています。こうした権利を用いて,自分自身の裁判に対する影響を最小限にとどめることが重要です。証言拒絶権を行使するか,それはどの範囲で行使できるかなど,きちんと検討することが重要です。
そして,上のように,他の共犯者の裁判で証言することは非常にリスクの高い場合が多いため,基本的には証言拒絶権を幅広く行使することが勧められます。法廷の内外で,証言拒絶権を行使したことについて非難する意見が聞かれることがありますが,証言拒絶権は法が認めた権利であり,その行使をすることは,むしろ通常の対応ということができます。