弁護士以外と面会できない
身体拘束をされている人にとって、家族と面会できる時間というのは、精神的にも大事な時間になります。時には、手紙のやりとりも、心の支えになると思います。
また、衣類や書籍を始めとして、家族から身体拘束されている人に対して、差入れすることも、重要です。
ですが、事件によっては、裁判所から「接見等禁止命令」といって、弁護人以外との面会や、物・手紙のやりとりが禁止される場合があります。
接見等禁止命令とは
「接見等禁止命令」とは、弁護人以外の者との面会や物のやりとり等を禁止する裁判所の命令です。
この命令は、身体拘束で証拠隠滅や逃亡が防がれているとしても、なお証拠隠滅や逃亡のおそれが認められる場合に、裁判所が出すことができます。そのため、逮捕や勾留という身体拘束よりも、接見等禁止命令がされるハードルの方が高いことになります。
ですが、実際には、接見等禁止命令が出される事案は多くあります。
例えば、共犯者がいる事件です。
共犯者が多数存在する場合、裁判所や検察官が考える証拠隠滅の方法には、「脅して共犯者証言を変えさせる」「話し合いをして証言を合わせる」ことがあります。人の証言も裁判では証拠になるため、証言を変えさせることも証拠隠滅になります。
このように、共犯者と会って、もしくは面会した第三者に伝言するなどして共犯者と接触することで、共犯者の証言を変えてしまうと予想される場合に、誰かと会うことを防止するために接見等禁止がされることも多いです。
接見等禁止から抜け出す手段と工夫
接見等禁止命令から抜け出すための方法が、大きく分けて2つあります。
1つ目は、接見等禁止解除の申立てです。
2つ目は、接見等禁止命令に対する準抗告です。
「接見等禁止解除の申立て」とは、裁判所に、命令を解除してくださいとお願いする方法です。接見等禁止命令は、裁判所が自らの判断(職権)でするかしないかを決めることができます。そのため、裁判所に対して、判断を変えてくださいとお願いする(職権の発動を求める)方法をとるのが、この手段です。
「接見等禁止命令に対する準抗告」とは、法律上に認められた不服申立ての手段です。こちらは、お願いではなく、正式に裁判所に対して接見等禁止命令が本当に必要なのかどうかを判断してもらう手段です。
仮に、準抗告をして、接見等禁止命令が必要だと判断された場合には、それに対して「特別抗告」という手段もとることができます。これは、最高裁判所で判断してもらう手段です。
そして、接見等禁止から抜け出すために重要なのが、どの範囲で申立てをするかという点です。
全員との間で接見等禁止をなくすよう申し立てることのほか、裁判所から見て証拠隠滅や逃亡の危険が低いために認められやすい方法として、次のような方法が考えられます。
①特定の人との接見等を可能にするよう申し立てる
例えば、夫、妻、父、母という、特定の人物との面会や物のやり取りを可能にするよう申し立てることが考えられます。
接見等禁止は、証拠隠滅や逃亡の危険が考慮されています。そのため、事件と全く関係のない特定の人や家族であれば、面会等を通して証拠隠滅や逃亡の危険があるとは言えないことも多いです。したがって、人物を特定すれば、接見等禁止を外してもらえる可能性が高まります。
②特定の人物との、1回の面会を可能にするよう申し立てる
妻との〇月〇日の午後〇時から午後〇時の間における1回の面会、というように、日時を指定したうえで、1回の面会のみ可能にするよう申し立てることが考えられます。
これは、特定の人物であれば証拠や逃亡の危険が低いうえに、1回であれば、さらに証拠隠滅や逃亡を図ることが難しいため、より認められやすいといえます。
③特定の手紙のやりとりを可能にするよう申し立てる
妻から被疑者・被告人に対する1通の手紙を、差入れできるように申し立てることが考えられます。
これは、1通の手紙であれば、さらに証拠隠滅や逃亡を図ることは難しくなるので、さらに認められやすいと言えます。また、裁判所への申立ての際に、一緒に資料として提出すれば、裁判所が証拠隠滅や逃亡を図ろうとしていないか、その危険性を確認することもできます。そうすれば、裁判所のチェックが可能になり、より認められやすくなると言えます。
実際に面会が実現した事例
弊所の弁護士が担当した、共犯者が複数いるとされた詐欺事件があります。その事件でも、接見等禁止命令が出されていました。
まずは、接見等禁止を全面的に認めることと、それが無理だとしても母の接見等は認めること、を内容にして、接見等禁止解除の申立てをしました。
ですが、これは裁判所から許可が下りませんでした。
次に、法律上の手段として、同じ内容で準抗告をしました。ですが、裁判所がもう一度審査したとしても、母との面会すら認められませんでした。
そこで、接見等禁止を全面的に認めること、それが無理だとしての母の接見等は認めること、それが仮に無理だとしても弁護人立会いの上で1回の面会を認めること、を内容にして、接見等禁止解除の申立てをしました。
弁護人立会いとしたのは、面会時に弁護人が立ち会う方が、証拠隠滅や逃亡の危険がないかチェックする人物がいると捉えて裁判所が許可を出しやすいと考えたからです。
結果、弁護人立会いの上で1回の面会が認められ、依頼者と母が面会をすることができました。