刑事弁護人に求められる能力は様々ですが,その中で重要な能力として,想像力が挙げられます。
依頼者との関係での想像力
想像力にはいろいろな意味があります。刑事事件の被疑者・被告人になってしまった方は,捜査機関から疑われて逮捕されてしまっています。捜査機関も,全く何の根拠もなく逮捕したりすることはほぼありませんから,一定程度,逮捕された人が疑わしいことを示す証拠があることが多いです。その中で,「自分はやっていない」という被疑者・被告人の訴えは,とても疑わしく見えてしまいがちです。しかし,弁護人は,その時に依頼人の話をきちんと聞き,一見疑わしい話でも,もしかしたらそういうことがあるかもしれない,という想像力をもって調査をしなければなりません。刑事事件は,常にマイナスからのスタートですので,想像力を持ってあらゆる可能性を検討しなければいけないのです。
証人尋問での想像力
それから,証人尋問などでも想像力は重要です。特に検察側証人を尋問する反対尋問では,その証人がどのような証言をする傾向を持った人物か,尋問前に想像力を働かせて予測しなければなりません。そして,実際の尋問の際には,証人との受け答えを進める中で,弁護人の質問に対してどのような答えが想定されるのか,想像力を巡らせながら尋問をしなければいけません。