このページでは,無罪を獲得するための証拠開示などの弁護活動について解説します。
名張毒ぶどう酒事件で,弁護団が検察側に証拠の全面開示を求めた,という報道がありました。
名張毒ぶどう酒事件とは,1961年に起きた殺人事件(被害者5名)で,第1審は無罪判決だったものの,控訴審で一転死刑判決となり,その後確定しました。現在まで再審請求が続けられ,えん罪事件の疑いがあります。
なぜ弁護団が証拠開示を求めたかというと,日本の刑事裁判では警察や検察が捜査して集めた証拠が必ずしも被告人・弁護人に開示されないという現状があるからなのです。
本来有罪か無罪かを決める刑事裁判では,捜査機関が集めた証拠は全部開示されるべきです。ありとあらゆる証拠を検討して,間違っても無実の人を罰してはならないのです。しかし税金を使って集めた証拠が警察や検察の手元に隠され,無実の証拠が闇に葬られたり,検察官が提出する証拠が事実かどうかを確認するための証拠が埋もれてしまうことになります。
制度として全面的な証拠開示が認められるべきであることは当然のことですが,現在の刑事裁判の実務を前提とすると,いかに検察官側にある証拠を開示させるかが,無罪獲得のための弁護活動の重要なポイントになります。
証拠開示は,検察官が提出しようとする証拠を読み込み,捜査がどのように行われるかを考え,他にどのような証拠があるかを見抜き,それを提出するよう粘り強く求めていくことになります。これは刑事事件の一定の経験・知識が要求されます。刑事事件に強い弁護人はこの証拠開示を徹底して行います。
名張毒ぶどう酒で犯人とされてしまった奥西勝さんは今88歳です。一日も早くえん罪の汚名が晴れることを祈っています。