捜査機関の捜査は、逮捕されて「身柄拘束された状態」で進められるイメージも強く、そういった事件も多数存在します。
ですが、事件によっては、身柄拘束をせず、「在宅」のまま捜査が進められることも多いです。また、最初は逮捕されていたけれど、処分保留釈放となって、在宅に切り替わる事件もあります。このような在宅の事件でこそ、幅広い防御活動が重要になります。
今回は、在宅事件で行われる任意取調べでの防御活動を紹介します。
任意取調べとは
任意取調べは、身柄拘束されていない場合などの、取調べを受ける義務のない取調べを指します。そのため、取調べ自体に行かないこともできますし、取調べ室で取調べをしている間に部屋を立ち去ることもできます。取調べ中に電話をかけることもできます。
このような任意取調べでは、身体拘束されているような場合と異なり、取調べに対してどのように対応すれば良いかの選択肢に大きな幅があります。
そのため、弁護士が事案に応じて、どのような対策をとるのがよいか、相談して選ぶことができます。
在宅事件における任意取調べの防御方法
取調べを受ける方にとって大きな不安は、「取調官の質問に対してどのように答えたら良いのか」「その答えが、自分の不利になってしまわないか」ということです。
そして、弁護人からすれば、取調べにおける最も重要な防御は、「真実に沿わない供述調書を作成されてしまう」「供述調書に記載されなくても、こちら側の情報がもれてしまう」ということです。
こういったリスクを回避するために、そもそも取調べに応じないという判断も十分あり得ます。ですが、事案によっては、取調べに応じることで、逮捕・起訴のリスクを抑えられるものもあります。そこで、任意の取調べに応じる場合の対策として、有効なのは、【取調べ中に、弁護人のアドバイスをもらう】ということです。
例えば、弁護人と依頼者の間の打合せで、「取調べ中に、回答に困ったら、弁護士に電話をする、といって取調べ室を出てください」「だめだ、と言われたら必ず弁護士に後で教えてください」「供述調書を読んで内容を確認した後、署名をする前に必ず電話をしてください」と打ち合わせておく方法が考えられます。
依頼者の方が回答に困ったとき、威圧的な質問で困惑したときに、弁護人が助言できるような体制を作っておけば、取調べで十分な防御を図ることができます。
また、供述調書に「ここに書かれていることは正しいです」という意味の署名押印をする前に、弁護士と電話するようにしておけば、話と違うことが記載されていないか、不利な記載になっていないか、確認することができます。
特に、供述調書というのは、一度署名押印をすると、その内容を争うのが困難になるため、署名押印前の助言は、刑事手続における防御としてとても重要な意味を持ちます。
なお、最近は検察官の取調べでは、録音録画が実施されることが増えています。この場合、供述調書に記載されていなくても、取調べで話したことが映像と音声で証拠に残ってしまうため、署名押印前だけでなく、取調べ全体として回答に困ったときには必ず相談する、と打ち合わせておくべきです。
実際の事件での配慮など
任意の取調べのため、弁護人が同行することや弁護人と相談することに、検察官の承諾は必要ありません。ですが、当日、依頼者が弁護士と話したい、取調べ室を出たい、と言ったときに万が一何か揉めることがあると、依頼者に少なからず精神的な負担がかかってしまうこともあります。事前に警察官や検察官に連絡をしておくということも、事前の策として取り得る手段です。
防御の幅が広い在宅事件でこそ、十分な防御活動を尽くすことが重要です。