過去の犯罪が発覚したら
刑事事件を起こして有罪の判決を受けた後に,その前科の前の事件が発覚したらどうなるのでしょうか。
一般的に複数の事件を起こして,同時に起訴され審判されれば併合罪として1個の判決が下されます。例えば,窃盗事件と傷害事件を起こし,同時に裁判となった場合には,2つの罪名があわせて懲役○年という判決が下されます。
他方窃盗罪で懲役1年執行猶予3年という判決が確定した後に,窃盗事件の前に起こした傷害事件が発覚した場合どうなるでしょうか。
傷害事件で逮捕され起訴猶予や罰金刑となることもありますが,事案の重大性等によっては,前科の前の事件でも起訴されることがあります。
刑法の規定は?
刑法では,以下のような規定を置いています。
刑法45条
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
50条
併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。
つまり,前科の判決の前の起こした事件についても前科の罪と併合罪としてさらに判決を下すことになります。
量刑はどうなる?
このとき量刑はどうなるかというと,窃盗事件と傷害事件が同時に処理されていたら下されていただろう判決を想定して,その分を追加して言い渡すという考え方もありますし,多少の考慮はするが必ずしも同時処理されていた場合と同じ出る必要はないという考え方があります。
前科の裁判の時に同時処理することが容易であったかなどが考慮されることになります。
最初の事件が執行猶予だった場合は深刻な問題があります。その前に犯した傷害事件が実刑判決となれば,最初の窃盗事件の執行猶予が取り消されてしまうのです。
従って,同時に処理されていれば執行猶予であったことを主張し,2度目に起訴された事件の際も再び執行猶予判決が妥当であると裁判官を説得する弁護活動をする必要があるのです。