前科がある場合 執行猶予判決が受けられるか

前科がある。また犯罪を犯して刑事裁判を受けることになってしまった。
この様に前科があって再犯を犯してしまった場合,一般的により重い刑になることが予想されるところだと思います。
このように前科があるとき,実刑判決とならずに懲役刑に執行猶予が付されるのはどういった場合でしょうか。

初回の執行猶予

懲役刑に執行猶予が付される条件として,
1)前に禁錮以上の刑に処せられたことがない
あるいは
2)前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない
(刑法25条1項)
場合は法律上,執行猶予が付される可能性があります。

「禁錮以上の刑」なので,前科が罰金の場合にはこの条件は問題となりません。
未成年の時に犯した犯罪行為で少年院送致や保護観察処分を受けたものは,刑事罰を受けたものではないため,前科ではありません。
また,前科が懲役刑の実刑判決であってもその刑期の服役を終えてから5年を経過している場合は2)の条件を満たすことになります。

1)2)の条件を満たすとして懲役刑に執行猶予が付されるのは,刑期が懲役3年以下のもので,執行猶予の期間は1年以上5年以下のとされています。
懲役3年を越える重い刑が言い渡される場合には執行猶予は付されません。
執行猶予が付されるかについては,情状によるとされています。
刑の重さは,行われた犯罪行為の態様,結果の重大性や非難可能性を基本とした上で,その他の事情を考慮されて判断されます。
執行猶予が付されるかどうかで考慮される主な事情としては,動機に酌むべきものがあるか,被害結果の重大性,被害弁償がなされているか,示談が成立しているか,再犯のおそれがあるか等と言えます。

前科がある場合

前科がある場合が,その前科が同種の犯罪のものか,前科からどのくらいの年数が経過しているかが重視されます。
前科があって2)の条件を満たしていても,前科から年数がまだ10年も経過しない間にまた同じ種類の犯罪を繰り返してしまった場合は,執行猶予が付されるのは困難といえます。

執行猶予中の再犯に再度の執行猶予

執行猶予中に再犯を犯して刑事裁判を受ける場合,再度の執行猶予が付されるのはさらに厳しい条件が定められています。
刑期が懲役1年以下のもので情状に特に斟酌すべきものがあるときに,再度の執行猶予を付すことができるとされています(刑法25条2項)。
再度の執行猶予が付されるときは,執行猶予期間中,保護観察に付されることになります。保護観察とは,保護観察官,保護司の指導監督等を受ける処分です。
また,前科が保護観察付きの執行猶予判決の場合は,再度の執行猶予は認められません。

執行猶予期間中の再犯に再度の執行猶予が付されるのは例外的です。
犯行に特に酌むべき事情があったり,被害結果が軽微であったり,示談が成立していたり,被害者も処罰を望んでいなかったりすることの他,特に再犯のおそれがないといえるような積極的な事情を明らかにする必要があるといえます。

当事務所の弁護士の弁護活動の一例として,懲役刑の執行猶予中の犯行であった事案において,犯行が精神疾患の影響によるもので特に酌むべき事情あること,示談が成立して被害者の方は刑事罰を望んでいないこと,家族の支えがあって特に再犯のおそれがないこと等の積極的な事情を明らかにし,再度の執行猶予判決を得ました。

前科がある場合の不起訴処分,罰金刑

前科が懲役刑の実刑判決で服役を終えてから5年を経過していない場合は,法律上,懲役刑に執行猶予を付することはできません。
もっとも,起訴されて実刑判決を受けるのではなく,起訴猶予処分や罰金刑となる可能性自体はあります。
このように起訴猶予処分や罰金刑とするかどうかは,検察官が判断します。
刑事裁判で執行猶予判決を求めるのと同様に,起訴前の段階で検察官に対して,犯行に酌むべき事情があること,示談が成立していたり,被害者も処罰を望んでいなかったりすること,再犯のおそれがないといえること等の積極的な事情を明らかにすることが重要です。

当事務所の弁護士の弁護活動の一例として,実刑判決の前科で服役を終えてから5年を経過せずに同種の再犯を犯してしまい起訴されれば執行猶予が法律上付すことができない事案において,被害者に対するお詫びを行い家族が支援して再犯のおそれがないこと等のの積極的な事情を明らかにし,起訴猶予処分となって実刑判決を受けることはなくなりました。

 
 
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