刑事裁判では,実行行為という言葉が使われます。
実行行為とは
刑法という法律によって,特定の行為について,それぞれ刑罰を定めています。
例えば殺人罪であれば,人を殺したものは,死刑,無期又は懲役6年以上に処する,などといった具合です。
このように,犯罪が成立するための行為を実行行為といいます。
行為を行い結果が発生すれば既遂,結果が発生しなければ未遂罪ということになります。
実行行為と実行の着手
しかし行為といっても,どこからが実行行為なのかというと事案によっては難しい問題があります。
例えば,殺人罪は人を殺そうとする行為ですが,包丁で刺せば当然実行行為です。
しかし,包丁を相手に向けた時点では,行為があると言えるでしょうか? 相手に向けて振りかぶった時点ではどうでしょう。
実行行為の最初の時点を実行の着手といいます。
判例などでは,例えば窃盗犯が居宅に侵入し,物色行為をはじめた時点で窃盗の着手があるとしたケースがあります(従って,他人の家に窃盗目的で侵入したものの物色行為すらせず出てくれば住居侵入罪は成立しますが窃盗罪は成立しません。)
一般的には,結果発生の現実的危険性がある行為及びこれに密接に関連する行為に実行の着手があるとされていますが,個々の事例ではその判断が難しい場合も少なくありません。